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「猫ってかわいいですね」

由希の言葉に猫又は大きく頷いた。 ふわふわとした手触りと心地よさに思わずふうと息をもらす。

「こればっかりはやめられない。 いつでも遊びにきたい場所だ」

そばに置かれた飲み物を口に含んで、もう一度三毛猫の頭をなでる。 うれしいのかにゃあと三毛猫は鳴いて由希に体を擦りつけてきた。

「そういやぁ……」

己の顎をなでて、猫又は台の向こう側にいる由希に手を伸ばす。 身をのりだして由希の喉に触れた。

耳たぶに触れて、顎にふれて。 にんまりと笑みを浮かべた猫又は由希のえりをつかんでそばに引き寄せた。

台から身を乗り上げてしまい、猫又の胸に飛びこんだかと思うまもなく由希の体は背中から床に抑えつけられていた。

「この前は聞きそびれてたがな。 お前はどうやってあいつをたぶらかしたんだ? 」

由希の肩を抑えながら、唇に触れる。 猫又はちらりと牙を覗かせると由希の首筋に舌を這わせた。

びくりと体を震わせた由希の姿を横目に見つつ、猫又は由希の首に一本一本と指を絡ませていく。

「知らないです。 電柱に挟まって動けなくなってた大之助さんを助けたら、なぜか気に入られてしまって」

電柱に挟まってという由希の言葉に猫又は吹き出した。 おかしいと腹を抱えて笑う猫又になんなんだと由希は思いつつ、体を起こす。

「あいつはなにやってんだか。 まさか電柱に挟まるなんて」

おかしいと笑う猫又に由希は首をかしげる。 ひとしきり笑い終えた猫又は息を吐き出すと、由希を膝に乗せた。

「悪かったな、あいつは昔から他者に興味を示すことがなくてな。 珍しく今回は興味をもって大切にしてたから気になって」

由希の頭をなでて、猫又は頬に口付ける。

頬をほんのりと赤く染めた由希の姿に猫又はガハハと笑った。

「そういえば、あなたは大之助さんとどんな関係なのですか? 」

由希の言葉にそういえばと猫又は思い出す。

「俺はあいつの長兄だ」

 猫又は理由を語った。 驚きとなぜかやっぱりという言葉が由希の頭によぎる。 

 最近は大之助の兄妹たちと何人か遭遇していた由希にとってあまり驚きがなく、そして息を吐きだした由希の姿に今度は猫又の男が首をかしげた。

「あまり驚かないんだな」

「なんでかわかんないけど最近、大之助さんの兄妹をよく見るようになりまして」

「お、なんだあいつら来てたのか」

 さてどいつのことだろうかと指をたてる長兄だという猫又の男の膝から由希は下りた。 そばに寄ってきた三毛猫をなでて、息を吐きだすと男はふんと鼻息をもらして飲み物を口にする。

「まだ終わってないぞ」

 男は声にだして笑う。

 男がなにを言っているのかわからない。 振り返ろうとした由希の腕に男の尾が絡みつく。

「人ってなかなかいないものだからな」

 由希の視界に入ったのは牙をむきだしにして己の唇を舐める男の姿だった。 

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