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〇月✕日
由希に友達ができたらしい。
由希を預かって数年と経つ。
小学校一年生になった由希の背中を見送るのが最近の墨の日課。 最初は無事に学校までたどりつけるのか心配だったがこの新しくできた友だちのおかげで特に問題もなく学校に行き、なにごともなくこの友だちと遊んで帰ってくる。
「墨、墨、聞いて! 今日も辰美と遊んできたの」
由希は今日あったことを墨に報告する。 早く聞いてと言わんばかりに台所で晩御飯の準備をする墨の足をつかんであのね、あのねと言葉を紡いでいく。
「よかったな、辰美くんと仲良くなって」
「あのね、辰美ってすごいんだよ!! 僕の知らないことをいっぱい知っていて、いろいろと教えてくれるんだよ」
満面の笑みで語る由希が墨にとってはかわいくて仕方がない。
ただ、そんな笑みを浮かべさせる辰美という少年にちょっぴり嫉妬している己がいることに墨はため息をこぼした。
〇月✕日
由希が服をぼろぼろにして泣きながら帰ってきた。 どうやら途中で辰美と別れたあとに襲われたらしい。見たところケガはしていないようだった。
「すみぃ」
「お前どうしたんだ」
ぼろぼろになった服はもう用途をなしていなかったので早々に墨はそれをゴミ袋に放りこんだ。 ただ泣く由希の頭を墨は撫でる。
両手を広げて墨に抱っこをねだる由希を抱えた墨はそのまま風呂へと入っていく。
お湯をはった浴槽に由希を放りこむと泣いていた由希がおさまった。
「怖かったな、由希。 大丈夫だから」
隣に入った墨は由希の頭をなでる。 あのねとなにがあったのかを語りだす由希。 辰美と別れたあとに人に興味のあるモノたちに捕まり、無遠慮に体を撫でまわされたらしい。
沸々とこみ上げてくる怒りをなんとかおさえつけつつ、由希が安心するように何度も頭を撫でる。
「なんで僕は人なんだろ」
由希がつぶやいた言葉になんと返事を返せばいいのか、わからなかった。
〇月✕日
今日も由希が
「墨、なにをしてるの? 」
由希に出会ってから欠かさずにつけている日記を書こうとしていたとき、声をかけられた。
いつのまにか仕事部屋に来ていた由希。 右手にはブラックコーヒー、左手にはカフェラテがそれぞれ握られており、右手のコップを墨の机の上に置いた。
「いつもの日記を書いていたんだ」
何冊目かわからない日記帳を閉じた。
「それにしても大きくなったよな由希」
ついくせで頭を撫でるとむっとした顔をした由希だったが、すぐに墨の手を振り払う。
昔は撫でられるのが大好きだったのに、と口にださずとも顔に出ていたのか由希がそっぽ向いてしまった。
「本当に、大きくなった」
「いつと比べてるの。 僕はいまから大之助さんのところに行ってくるから」
持っていたカフェラテを飲み干した由希は足早に部屋から出ていく。 遠くで玄関が開いて閉まる音が聞こえて残念と墨は笑った。
今日も由希がかわいかった。
墨はもう一度、日記帳を開いて続きを書き始める。




