悪い子にはおしおきを
「なにをされているのですか、兄上」
その日、学校はお休み。
大和は最近の日課となっていた兄の運営する駄菓子屋へと足を運んでいた。 お客は来ているのだろうかと店の中に入った大和はいつもとは違う光景にどうしたと頭を抱えた。
縁側に腰を下ろす大之助のひざの上にはなぜか、腰に手を回されたままおとなしく座っている由希の姿がある。
しかも制服や私服ではなく、頭には黒い色の猫の耳、上着はなく両腕には黒いカバーが手首から肩まではめられていた。 申し訳程度に白い下着を身に着けた由希の足の付け根から指の根元まで取りつけられた黒いカバー。
そのそばでは由希の姿が気に入った黒猫がにゃあと鳴きながら、人の姿のまま由希に体を擦りつけていた。 黒猫の姿を一瞬だけ見て、大和はあっと声をもらす。
「なんで黒猫とおんなじ格好を由希にさせているのですか」
由希の姿は黒猫が人の姿になったときと同じだった。
「これはね、由希への罰。 せっかく作った新しいお菓子をだそうとしていたら、由希が全部おじゃんにしちゃったの。 その罰として今日は俺の気が済むまで何でもしていいってことになってんの」
だからと大之助はずり落ちそうになっていた由希を抱え上げて、懐に押しこんだ。 息苦しさにぐえと声をもらした由希の頭をなでつつ、あくびをこぼす。
「ちなみにさっきはこんなの着せていたけどね」
そうこぼしつつ、そばに散らばせていた写真を手に取った。 よく見ると二人と一匹を取り囲むように散らばっている写真の山とおそらく由希に着せたのであろう衣服の山に大和はため息をこぼしつつ、荷物をおろしてその場に向かう。
肩に乗っていた三つカラスは気がついたときにはすでにその場に行っており、黒猫に体を擦りよせていた。
にゃあと鳴く黒猫の鳴き声に合わせてかあと低い声で鳴いた三つカラスは人の姿へと変えた。
「素晴らしき、黒猫とコラボしてみた」
黒猫の恰好をした由希と黒猫が重なり合うようにして写真に収められていた。 かといえば顔の近い写真、黒猫に口づけられて頬を赤らめる写真。
かわいいとこぼす大之助の手から写真を奪い取った三つカラスは何枚と撮られた写真を眺めて、黒猫と由希を見つめる。
「かあ」
三つカラスは鳴いたと同時に右手に黒猫、左手に由希を引き寄せると二人の頬に口づけた。
「ちょ、なに」
「かあ」
カラスはもう一度、鳴いた。
二人の腰を抱いた三つカラスは満足というようにほおずりをし始める。 三つカラスの髪の毛が由希の肌をなぞるようになでていくため、くすぐったいと身を震わせた。
「両手に花だ、と」
由希のそばに腰を下ろした大和になにがと問う前に三つカラスに口づけられた。
「右手に愛しい黒猫、左手には仮装した由希がいて満足って言ってるが」
三つカラスに何度も頭を撫でられ、首をなでられ、くすぐったさに口を開くと口づけられる。
恥ずかしさに頬を赤らめる由希の頬を黒猫が舐めた。 ざらりとした猫特有のざらついた舌にびくりと体を震わせると黒猫はにゃあと鳴く。
「うれしくないです! 」
「いいじゃないか、嫉妬されて目をえぐられるより気に入られるほうが」
物騒な言葉をぽろりとこぼす大和にひぃと由希は情けない声をもらす。 そんな物騒な話の張本人はというと二人を愛でるのに夢中らしく、耳には入っていないようだ。
首に触れる三つカラスの指から伸びている爪がいまにも喉を切り裂きそうで由希はごくりとつばを飲みこむ。 もしかしたら、という仮定を考えている由希とは反対に何度も頬に口づけたかと思うと由希の剥きだしになっていた胸に手を触れた。
「ちょっ、いやだって」
身を揺すった由希におかましなしの三つカラスはぷっくりと主張していた由希の突起に触れた。 体を震わせる由希の首に顔を埋める。 由希のにおいを確かめるように何度も嗅ぐ三つカラスに由希が涙を浮かべたときかあという声が耳に入った。
「かあ」
鳴き声に反応して三つカラスは鳴く。 鳴いたと同時に人の姿からいつもの三つのカラスに戻った。
「悪かったな、由希」
由希の頭を撫でる大和に安堵の息をもらした。
「全く、ちょっとおいたが過ぎたぞ」
三つカラスの頭を軽く叩いた大和。 三つカラスはなにも言わずに由希をちらりとだけ見て、すぐに黒猫のそばにすり寄った。 気がつくと黒猫も元の姿に戻り、欠伸をこぼして体を丸めている。
「兄上も、由希がかわいそうですよ」
「んで、じつはこんなのもあったりするんだけど」
四つん這いで逃げようとした由希をそばに引き寄せた大之助は、近くに置かれていた衣服の山に手を伸ばした。 衣服を見る限り、写真に写っていた由希が着ていたものが何枚もその山に埋もれている。
その中からえんやと一着の服をとりだした大之助は大和の前で広げた。




