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 ずきりと痛む。

 先ほど別れた昂輝から振り落とされた拳の痛みがまだ頭に残っており、痛む頭をなでた。 帰る間際まで頬を赤く染めていた昂輝に大変だなと思いながら。

「こんにちは、大之助さん」

 店の扉を開くとだるそうにレジの横でお菓子をだしている大之助と目が合った。 由希が来るまではぶらりと垂れ下がっていた二つの尾が由希の登場により垂直に立ち上がり、右に左に動き始める。

「由希」

 表情は乏しい大之助だが、全身で由希を歓迎している姿に由希は笑った。

 由希のそばまでやってきた大之助は尾を由希に絡ませてその腰に腕を回す。 由希の頭に顔を乗せて、そのにおいをかいで抱きしめて。

 これはなにも言わなくてフリーハグになるではないかと由希は自分の中で納得させる。

 大之助に関しては常にフリーハグなのだ。

 一人でうなずく由希に大之助は首をかしげた。

「どうかした? 」

「テレビでですね、海外の文化でフリーハグってのをやっていて。 僕からいつもお世話になっている人にハグをしようと思っていたのですけど、大之助さんからやってくれるんだなぁって」

「フリーハグ? 」

 由希の言葉に大之助はうんと顎に手をあてながら考えて、すぐに考えるのを止めて両手を開くと、もう一度由希を抱きしめる。

 ほんのりと温かい大之助に体温に心地が良いと由希は思う。 猫を抱きしめるとこんな感じなのだろうかと由希が思っていると大之助に抱えられた。

「とりあえずお茶でもする? 」

「お客さまが来たらどうするのですか」

「来たら声をかけるだろうし、大丈夫大丈夫」

 なんとなく安心できないと思う由希を連れて居間に向かうと、居間でいびきをかいて寝ている甚一郎の姿があった。

 仰向けの大の字で寝ている甚一郎に大之助はため息をこぼす。 由希たちが来たことに気がついていなのか時折、寝言をこぼしながらお腹をかいている。

 この妖怪って一応、すごい人なんだよねと由希が思っているとその場にゆっくりと下ろされる。

「寝てたの忘れてた。 実家で寝ればいいのに」

 呆れたとこぼす大之助の両手をつかんだ由希はそれを左右に開かせる。 なに? と表情で語る大之助の懐に今度は自分から飛びこんだ。

「僕らかもハグを…… と思い、まして」

 大之助からは墨とはまるで正反対の甘いにおいがする。

 とても甘く、とてもおいしそうなにおい。 のどの鳴った由希の姿に大之助は笑った。

「由希から抱きついてもらうのもいいなぁ」

 由希の頭を撫でて、背中をなでて。

 ぎゅうと抱きしめてもらい、由希は思わず顔がほころんだ。

「ついでにそこの転がっている奴にもしてあげて。 もう勢いよく飛び乗っても大丈夫だから」

「えっいいんですか? 」

 大之助のうなずきに由希はにんまりと笑う。

 再度、大之助を抱きしめて解放してもらうと由希は仰向けに寝ている甚一郎に飛び乗った。

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