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授業が終わる。
チャイムの音が学校中に鳴り響いたとき、由希は思った。 昼休みは気がつくと辰美の腕の中で眠っており、起こされるまで気がつかなかった。
起きるとなぜか満足した顔ともっとという願望を向けてくる辰美がいたが、授業に遅れると急かして教室に戻ってきていたのだ。
「じゃあ由希、俺は用事があるからいくね。 また明日」
去っていく辰美を見送って由希は教室から出た。 生徒たちは一同になにをしようかの話をしていた。 部活だったり、買い物だったり。 もしくは放課後の教室で語り合ったり。
いろいろな声が聞こえてくる。
「そういえば昂輝さんが玄関で誰かを待っていたみたいだけど」
「生徒会長じゃない? 最近、なぜか過保護になっているって聞いて」
「あの人に過保護って冗談じゃない? あんな怖い人が誰に狙われるっていうのさ」
その生徒の問いかけにだよなぁと周りは笑った。
確かに最近の大和は過保護になっていると由希は思う。 それもこれもあの蒼い龍の騒動に昂輝が巻き込まれたからだ。
あれ以来、過保護になっていると昂輝がぼやいていたことを知っている。
そんなことを考えながら由希が玄関に向かうとそこには由希の靴箱の前に立っている昂輝の姿を見つけた。 由希の姿を見つけるとやっときたかと言わんばかりにため息をつく。
「どうしたのですか、昂輝さん」
「早く大之助さんのところに行くぞ」
靴を履いていると早くと急かされ、由希は昂輝に腕を引かれながら校門からでていく。
どんな組み合わせなのだろうかとみていく生徒たちを昂輝はにらみつけて。 おっかないと逃げていく生徒たちを威嚇しながら学校を離れた昂輝はため息をこぼしてうなだれた。
「わりぃな、巻き込んだ。 大和がしつこくて…… 送っていくと聞かなくて撒くのに使わせてもらった」
「大和さんも相変わらずですね…… 」
「いい加減にしろと言っているのに聞きゃしねぇ…… そんなに心配されるほど弱くはないって言ってんのに…… 」
ぶつぶつと文句をこぼしながら隣を歩く昂輝の姿に由希は苦笑いをこぼした。
あれだけ生徒たちから恐れられている昂輝でさえ、大和には頭が上がらないのだ。 もし本当に嫌ならば拒絶するなりすればいいのに、昂輝はそこまでのことはしない。
口では嫌だと拒否していても、まんざらではないのかもしれないと由希は思う。 そんな由希の考えを読み取ったのか顔をしかめ面にして由希の頬をつねった。
「そういえば昂輝さん、フリーハグって知ってますか? なんか海外の文化みたいなんですけど」
「フリーハグ? なんだそれ」
「僕がテレビで見たのはフリーハグって書いた看板をもって街頭とかに立って、見知らぬ人に抱きしめてもらうって文化らしくて。 さすがに僕がそれをするわけにはいかないので、普段からお世話になっている人にお願いしているんです」
だからと両手を広げた由希の姿に昂輝はため息をこぼした。 やってくれないかなと由希が両手を下ろそうとしたとき、昂輝に腕をひかれて胸に飛びこむ形になってしまう。
「これでいいんだろ」
由希の頭の上でため息交じりの言葉が聞こえた。 どこか無遠慮に背中をなでる昂輝の胸元に顔を埋めて、ふと。
「大和さんと同じにおいがする」
由希がぽつりとつぶやくと耳や首元までトマトのように真っ赤に染めた昂輝の拳が由希の頭に振り落とされた。




