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「辰美! ハグしよう! 」

「ハグ? 」

「うん、ハグ! ぎゅってしよう」

 昼ご飯を食べていたときに由希は思い出したように辰美に両手を広げて迫った。 なんのことかわからず目を細めた辰美だったが抱きついてきた由希に持っていたパンを落としそうになる。

「またかわいいことをするなぁ」 

「テレビでフリーハグの文化のことが放送されていたから、日ごろからお世話になっている人にハグをしようかと思って」

「フリーハグねぇ…… 海外は変わった文化がいろいろとあるんだねぇ…… 」

 興味がない口ぶりで話す辰美だったが懐に飛びこんできた由希はまんざらでもない。 しがみつく由希をかわいいとその頭を撫でるもそれは嫌なのか離れようとする。

 もちろん離すつもりはない。

「くっついてきたのはそっちなのに離れようとしないでよ」

「だって辰美が頭をなでるから」

 かわいいのだから仕方ないじゃないかと口にはせずに残っていたパンをほおばった。 

 しがみつく由希を強く抱きしめて、頭に顔を埋めて口づける。 ずっとこうしていたいなと辰美は考えていたが、だんだんと暑くなってきた由希は離してほしくなっていた。

 体温が高めの辰美は寒い冬はいいものの、温暖な気候のときや暑い夏なんかは耐えがたい暑さとなる。 本人はさして暑さを感じていないのか涼しい顔をして、汗をひとつもかいていない。

「辰美ぃ、自分でくっついといてなんだけど…… 暑い」

「自業自得。 由希からくっついてくれたから絶対に離さない」

 辰美の返答に由希はぶうと頬を膨らませる。 

 まるで頬袋にえさをいっぱいにつめこんだハムスターのようだと辰美は思う。 その頬をつつくとなに?と不機嫌な声が由希からもれて辰美は笑った。

 そんな辰美のことなど知らず、由希は辰美の胸元に顔を埋めた。 辰美はどんなにおいがするのだろうかと背中にまで手を回して辰美に体を押しつける。

 辰美からしたのはまるで外に干した洗濯物が太陽の光をいっぱいに浴びてぽかぽかしているようなそんなよくわからない、いいにおいだった。

「なんか辰美って干した洗濯物みたいなにおいがする」

「よろこんでいいのか不満をいうべきなのかよくわからないけど」

「んーなんていうかいいにおい…… かなぁ」

 由希をあぐらを組んだ膝の上に乗せた辰美はその背中に腕を回す。 最初は暑苦しそうにしていた由希だったがすぐにうとうととし始め、辰美は気がついたときには寝息をたてている姿があった。

「えっ寝たんだ」

 由希、と声をかけても反応をしない由希の姿に辰美は笑った。

「あぁ愛おしいなぁ」

 風によってなびく由希の髪の毛をなで、そして口づけた。

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