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 図らずもフリーハグというものを知り、次は誰にしようかと由希は考えていた。

 普段からお世話になっている人にするのがいいかと腕を組む。 珍しい人である由希がフリーハグを求めようものならばなにが起こるかわかったものではない。

 べたべた触られるのは目に見えているし、一歩間違えれば誘拐されかねない。

 想像したことにぞくりと体を震わせたときに肩に手を置かれて由希はひゃいというしまらない声をもらす。

「悪い、そんなに驚くとは思わなくて」

 後ろを振り返ると翼を折りたたんでいる大和が立っていた。 由希を驚かすつもりはなかったが、驚いた由希をみて大和もつられて驚いてしまう。

「おはようございます、大和さん」

「おはよう、由希。 今日も相変わらずいい天気だな」

 隣を歩きはじめた大和をちらりと見つめて、ハグのことを思い出す。

「大和さん、両手を広げてこっちを向いてもらってもいいですか? 」

 由希の問いかけに首をかしげつつも大和は言われた通りに両手を広げて由希のほうへ振り向いた。

 周りに誰もいないことを確認した由希はその胸にゆっくりと飛びこむ。 驚いた大和の姿があったが由希が背中に手を回すと大和は抱きしめ返してくれる。

「今日ですね、テレビでフリーハグと海外の文化あることを知りまして…… お世話になった人にハグをしようかと思って」

「フリーハグ? 変わった文化だな」

 と疑問に思いつつも抱きしめてくれる大和に由希は笑う。 

 墨のときとは違い、ふわりと香るのはさわやかな石鹸の香り。 まるで風呂上がりのような柔らかいにおいに由希はほっこりとする。

「なんか弟ができたみたいでとてもうれしい」

 由希より年上といえど大和は兄弟たちのなかでは末っ子なのだ。 昂輝でさえ三十近くも離れており、自分よりも年下の由希がかわいくて仕方がないようで。

 由希を懐から解放するとその頭を優しくなでた。

「大和さんがお兄ちゃんだとうれしいです」

 笑って応える由希の姿に弟が欲しいと大和が思っていたことを知らない。 

 母上に頼んでみようかと唇に触れる。 いっそ自分で生めと拳が飛んできそうだと身を震わせた。

「学校についたら昂輝にしてやってもらえないか? いま兄妹たちと離れて暮らしているから寂しがっているかなと思って」

「昂輝さんに怒られそうですけど…… 大丈夫かなぁ」

「由希なら大丈夫だと思う」

 笑顔で言う大和に本当かなぁと由希は首をかしげた。

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