1
「由希」
由希を見つけると大和はぱっと顔を明るくし、由希の元へ歩いてきた。
「こんにちは、大和さん」
「今日は祝日だったけど、アルバイトに来ていたんだな」
「はい。 大之助さんが久しぶりにお店を開くって言うからじゃあ来ようかなって」
由希の言葉に大和はあー…… となにかを思い出したように目を伏せ、ため息をこぼした。
最近起きていたことを知っていたのか大和は困ったように笑い、靴を脱いで家の中に入っていく。
それを見送ると由希はお金を置いているところを軽く掃除をした。 普段から掃除をしているせいかあまり埃はなく、きれいなもの。
「すみません」
またもお客様。
手にお菓子を抱えたお客様はそれを買うと嬉しそうに顔を綻ばせて店からでていく。 その姿を眺めるのは由希にとってとても好きで、癒される瞬間だ。
「あんなに喜んでもらえるとうれしいなぁ…… 」
そんなことを考えているとお金をカゴに入れる手を伸ばされたなにかに掴まれた。
毛むくじゃらの手は由希の腕をがっしりとつかんでおり、離そうとはしない。
一体、誰の仕業か。 由希が顔をあげるとそこには全身毛むくじゃらのなにかが立っていた。
目も鼻も口も、それどころか手の指先さえも毛むくじゃらにしたそのなにかは由希を引き寄せ立ち上がらせる。
なにを、と問う前に毛むくじゃらによって店の外へと引きずりだされた。
「なにをするんですか! 」
由希の言葉など聞こえていない。
手頃な木々の間を見つけた毛むくじゃらはその場所へと由希を投げ捨てるとその上に覆いかぶさった。
「離してください! 」
見えた。 一つの大きな瞳をもったその化け物は由希を見下ろし、頬をなでにたりと笑う。
目と口しかない顔をにたりにたりとさせながら、毛むくじゃらは由希の唇に食らいつく。
突如、奪われた唇に由希が胸を叩くもそれは由希の上着に指をひっかけゆっくりとへその方へと下げていく。
するとまるで糸がほどけるようにするりするりと由希の上着が開かれた。
「柔らかい」
その大きな口からつりさげられた舌を由希の腹へ下ろすと、弧を描くようにうごめき由希に跡を残していく。
「気持ち悪い…… 」
思わずつぶやいた由希の言葉に化け物はけらけらと笑うだけ。
由希のズボンに手をかけたところで化け物の体は勢いよく吹き飛んでいった。
本当に一瞬のうちに飛んでいったせいか由希がそれを理解するのに数秒を要する。




