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「大之助さんは下の方たちの面倒はみてなかったのですか? 」
冷蔵庫に入れていた麦茶ポッドから麦茶を注いだ湯呑を由希に手渡す。 それを受け取った由希は飲みながら大之助のほうへ視線を送った。
注いだ麦茶を一口だけ飲んだ大之助は全然と答える。
「大和はかわいくてしょうがなくて面倒を見ていたけど、他のやつは見ていなかったなぁ…… 。 みていたとしても五男くらいかな」
五男。 紅葉の言っていた双子の弟のことだろうか。
「甚一郎がほかのやつに手を焼いていたから五男は面倒を見てくれるやつがいなくて俺のそばに置いていたの。 男ばかりに好かれて大変だったけど」
そうだった、由希は思い出す。
紅葉は独り言のようにつぶやいていた。 自分は女に好かれて弟は男に好かれやすいと。
「男に好かれるって大変ですね」
「そー本当に大変。 ちょっと目を離すと連れ去られそうになるわ、夜這いをかけられそうになるわで大変で。 そのたびになんとか守ろうとするんだけど、次から次へとって感じできりがないし」
気がつくと全裸の女が腹の上にいたと紅葉は言っていた。 四男は女で五男は男か。 大変な双子だ、と由希が思っていると持っていた湯呑をひょいと奪われ、シンクの中へと移動。
「五男さんてどんな妖怪だったんですか? 」
気になると見上げてくる由希を大之助は抱きしめた。 ぎゅうと音がしそうなほど由希を抱きしめてその背中に指を這わせる。
くすぐったいともらす由希に大之助はくつくつと笑った。
「すごくきれいなまっ黒の髪と瞳をもった、見た目は由希ぐらいの少年で。 甚一郎と紅葉と同じ母親から生まれていて、ここには翼が生えている」
翼。 大和が広げて見せてくれたあの大きな翼のような。
「一度でいいから由希に見せてみたい。 俺がいままで見た翼の中であそこまできれいな翼は見たことがない。 普段は黒っぽい赤の翼なのに、日に当たるとまるで夕焼けをまとったかのようにきれいな色に染まる姿がほれぼれするの」
「すごいですね! ぜひとも会ってみたい」
目を輝かせた由希の頭を大之助はなでた。 頭をなでて、頬をなでてもう一度だけ抱きしめて由希を解放した。
「さて、甚一郎の胸が腫れてないか確認してやるか」
さきに居間へと向かった大之助の背中をみつめて、そのあとをすぐに追いかけた。




