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 さて誰が来るのか。

 由希が一人考えているとすぐにその答え合わせはできた。 しいと口の前に指を立てられた大之助に子どもを渡されて、大之助は扉の横に背を預ける。

 どたどたと無遠慮な音を立てながら家の中を歩いてくる足音が扉の前に止まった。

「どうしたぁ大之助、いきなり呼び出しなんて」

 扉を開けた先に立っていた甚一郎の目には子どもを抱えた由希の姿がある。 大之助はどこだろうかと考える前に後ろから大之助に抱きしめられる甚一郎。 

 何事だと大之助に問う甚一郎の上着を握りしめ、大之助はそれを勢いよく引き裂いた。 服の残骸が辺りに散らばる中、大之助は由希を呼ぶ。

「由希、子どもを」

 上半身がさらけだされ、なにごとだと声をあげた甚一郎の胸に子どもの口を当てると子どもは待ってましたと言わんばかりに甚一郎に食らいついた。

「いってぇぇっ!! 」

 突如とした痛みに甚一郎は声をあげた。 

「なにがしたいんだお前ら! 」

 なんとか子どもを落とさないように抱えた甚一郎は後ろに立っていた大之助の腕をつかんだ。 大之助はというとやれやれとだけいうと甚一郎の背中を押し、由希の隣に座らせた。

「その子どもがおっぱいを吸ってないとひたすら鳴き続けるらしくて、親たちが体調を崩して面倒を見れないから少しの間だけ見ていてくれって言われて預かっているんだけど。 吸われすぎて皮膚が剥けて痛いから甚一郎に助けてもらおうかと呼んだの」

「だったら普通に呼べばいいだろ! 緊急事態だなんだといって昼寝中の俺を呼びやがって」

「素直に言うと絶対面倒くさいっていってきてくれないと思ったから」

 大之助の言葉に甚一郎はぐっと言いたいことを飲みこんだ。 お見通しだった大之助になにも言えずため息をこぼすと畳に体を倒す。

 子どもはもちろん腕の中のまま。

「い、痛くないですか? 」

 由希の問いかけに肩を上下に揺らした甚一郎。

「どっかの誰かが発情期だからって噛みついたり吸いついたりひっかいてきたりに比べたらいくらかましだ。 母親ってのは大変だな」

 それだけを言うと甚一郎はすぐに寝息をこぼしはじめた。 それにつられるようにうとうとし始めている子どもの姿もある。 無意識に子どもの頭をなでる甚一郎の姿を由希はちらりと盗み見る。

「小さい子の扱いがとても上手ですね、甚一郎さん」

「そりゃ下の姉弟たちの面倒を見てきた奴だから面倒見はいいだろうな」

 お茶を飲もうと台所に向かった大之助を由希は追いかけた。

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