離れません!
毎度おなじみ。
大之助の店にアルバイトにいくと必ずなにかが起きている。 例えばまたたびをぶちまけたり、暴れまわる小烏たちに店の中を荒らされたり、なぜかメイドの恰好をした猫又がいたり。
今回は特におかしかった。
「なにをしているのですか? 」
閉じられた店をすり抜けて居間に行くと、由希の視線の先には寝間着である着物をはだけさせ、剥き出しになった大之助の上半身にしがみついている烏天狗の子どもの姿が見える。 大之助に女のような胸があるわけでもないのに食らいつく烏天狗の子どもの姿にどういうことかと由希はため息をこぼした。
由希の姿を見つけると大きな隈を作った大之助がやあと力無く由希にあいさつをこぼす。 眠いと目をこすりながら子どもの頭をなでる。
「大之助さんって…… 母乳がでましたっけ? 」
「でるわけないでしょ、俺は母親じゃないし」
じゃあどういう状況なのかと由希が大之助の隣に腰を下ろしたの確認した大之助は胸元にいる子どもをひっぱると自分から引き剥がす。すると子どもは瞳に涙を浮かべて声を張り上げた。 ぼろぼろと涙をこぼして泣き叫ぶ子どもの姿に大之助は諦めたように子どもを抱え直した。
待っていましたと言わんばかりに涙を止めた子どもは大之助の胸に食らいつく。
「という感じで口に咥えていないと泣きだしてしまって手に負えなくなるんだ。 母親も面倒見る烏天狗たちも咥えられ続けて腫れるわぼろぼろになるわでみんな寝こんじゃって俺のところにきたの。 何日か面倒をみてほしいと言われて見てるけど赤くなるし、皮も剥けるしで…… 母親って大変だね」
やれやれとため息をこぼす大之助の姿に由希は大変だと思いながら子どもの頭を撫でた。 由希の存在に興味がないのか全力で吸いつく子どもに大之助の口からいたたという声がこぼれる。
「さすがに由希に代わってって言う訳にはいかないし…… すぐに戻ってくるからちょっと持ってて」
マジックテープを剥がすような、まるでべりっという音が聞こえそうだと由希は思った。 離さないと言わんばかりにしがみつく子どもを引き剥がして、由希に手渡す。
泪をこぼし始めた子どもを横目にみてどこかに電話をかけにいく。
「大之助さん、泣き始めたよ」
声をあげて泣く子どもにどうしたものかと由希が思っていると大之助がのっそりと体をひきずりながら戻ってくる。
「あいつを呼んだからしばらくの辛抱かな」
あいつとは?
首をかしげる由希にそのうちわかると大之助は子どもを受け取った。




