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「由希さんも手荒な真似をしてすみませんでした」
由希に対して深々と頭を下げた烏天狗の姿に由希は首を左右に振った。
「しかし驚きました。 刻印もなく、体も純情そのもの。 とても大切にされているのですね」
「当たり前。 由希は友人の最愛の子どもだし、俺も由希をとても愛おしく思っているし、素直でいい子でとても心優しい子だと思うよ」
由希の頭をなでる大之助にもういいですから、と由希は大之助の手を振り払った。
「では私は一度、巣に戻り頭領に会ってきます。 大之助さんの近くにいる由希さんという子どもはとてもいい子だと」
「頭領にもう由希には手をださないでねと伝えて。 もしだそうものなら一族の前でババアを連発するから」
大之助の言葉に烏天狗の表情は一気に青ざめた。
一目見てわかる表情の変わりように由希はどうかしたのかと聞く前にもちろんです! と声を荒げて烏天狗は飛んでいく。
「あっやばい、早く家に帰ろう」
家の中は飛び回る小烏たちがところどころに糞を落としており、大之助はため息をこぼした。 それぞれ烏天狗たちをそばにおろした大之助は落ちている糞を片付けていく。
「頭領って…… 」
由希の問いにあぁと大之助はもらす。
「烏天狗の中で一番偉い烏天狗で、俺と大和の母親。 ババアって言うと一族が崩壊するんじゃないかっていうぐらい怒るの」
母親。
初めて聞いた大之助たちの母親の存在に由希はとても気になったが後半の話を聞いてうわぁと声をもらした。
「大之助さんってたしか猫又の次期当主にって言ってましたよね? てことは猫又の当主と烏天狗の頭領の息子ってことになるんですか!? 」
「そうなるね、不本意ながら」
やれやれとこぼす大之助は糞を片付け終えると、小烏たちに幼虫を与えはじめる。
「なんかすごい家柄ですね」
「だからといって一族を継ぐつもりはないし、そんなのは甚一郎があってる。 人望もあるし、面倒見もいい」
「じゃあなんで大之助さんを? 」
大之助はちらりと由希を見つめて、すぐに視線をそらした。
それの意味がわからず首をかしげる由希の足に烏天狗の子どもが触れる。 お腹を減らしたのか口元に手をあて、瞳に涙を浮かべる子ども。
「そこにミルク入りの哺乳瓶を置いているから口元にあててあげて。 すぐに吸いつくと思うから」
大之助に言われた通りにすると子どもはすぐにミルクを飲み始めた。




