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誰だろうかと由希が口にする前に口を塞がれた。 力強く腕を引かれて茂みへと引きずり倒され、その上に一匹の妖怪の姿。
黒々とした力強い翼を広げた烏天狗の男は由希の首元に顔を近づけて
「刻印はないのか」
一言つぶやいた。
先ほど大之助の家で子育てに奮闘していた烏天狗の男は由希の体に刻印がないことを確認するとその首に指を這わせた。 一本一本がゆっくりと意思をもったように由希の首を絞めつけていく。
「服を全部脱いでもらおうか」
由希が首を左右に振ると烏天狗は由希の唇まであと数センチというところまで近づけ
「脱げ」
それだけを告げた。
強まってくる烏天狗の指に由希は己のズボンに手をかけた。 ベルトを外し、チャックを開けたとき、烏天狗によって下着ごとズボンを奪われてしまう。
「足を開け」
息苦しさに何度か息を吐きだす由希。
涙をこぼし、頬を赤く染める由希など見向きもしないのか由希の右足を肩にかけた。 さらけだされた由希のそこを指でなぞるように見つめ、ぽつりと
「なるほど」
由希の右足を下ろしたと同時に烏天狗の体は遠くへとすっ飛んでいった。
視界が薄暗くなりかけていた由希は喉の奥に入ってきた空気に激しくせきこむ。 喉をなで肩で息継ぎを繰り返す由希の背を烏天狗を蹴飛ばした張本人である大之助がなでる。
「俺を怒らせたいのか…… 」
明らかに不快の表情をもらす大之助の胸元で烏天狗の子どもが笑っている。 気がつくと三人目の烏天狗の子どもを片手に抱えていた。
「失礼しました」
由希に服を手渡す大之助に対して烏天狗は頭を下げた。
「なぜこんなことをした? 」
「…… 頭領から言付かってきました」
頭領という言葉に大之助は目を細めた。
ぽつりと口からあのババアという単語が聞こえる。
「あなたのそばにいる者が害のない者か確認してこい。 もし害を与えるものであれば、ためらわずその首を握りつぶせと」
烏天狗の言葉に由希の喉がひゅうと鳴った。
もしかしたら握りつぶされていたのかもしれないと思うと背筋がぞくりと震え、由希は思わず己の体を抱きしめる。
「なので確認させていただきました。 見たところ害を与える少年でもなさそうですし、とてもいい子のように感じます」
「由希はいい子だよ」
大之助の言葉に烏天狗は安堵の息をもらした。




