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寂しいの

今日はお休み。 学校もなく、たまには遅くまで寝ておこうと考えた由希の耳に妖怪たちの声が響いてくる。

鳥のさえずりよりもにぎやかな男たちのやりとりに眠れないと由希は欠伸をこぼした。

「せっかくの休みだ! 墨、愛しあおう! 明日も非番をもぎとれたので今日はじっくりゆっくりねっとり愛しあえる」

「誰が! 離れろ目玉! 」

居間に向かうと墨の腰に腕を回している百目鬼とうっとうしそうにその妖怪の顔を押す父親の姿がある。

ねぇ、と由希が声をかけても聞こえていないのか二人で言い合っている姿が。

「もう明日は足腰が立たなくなるまで愛して差し上げますよ墨! 」

「ふざけんな! 誰が…… 」

こりゃダメだ。 由希はため息をこぼした。

吸い込まれるように墨の仕事場まで行った妖怪たちを見送って、今日はなにをしようかなとテレビをつける。

ニュースばかりで気になるものがなにもなく、由希はすぐにテレビを消してしまった。

「大之助さんのところにでも行こうかな」

今日の墨は忙しいだろう。

アルバイトがある訳ではないがなんとなくこのまま家にいるのもなと由希が思い立ったとき、ガシャン、バンッ、ドンッという激しい音が居間まで響き渡った。

「二度と触んな! 」

そんな叫び声とも怒声とも混じった墨の声と共に百目鬼が仕事場から追い出されてきた。

乱れた服から見える首元には歯型がいくつか、それは百目鬼の腕にも無数に残しており、頬には大きな手型が残されている。

「どうかしたんですか? 」

由希の問いかけにため息をこぼした百目鬼は服を整えながら側まできた百目鬼は由希の頭をなでる。

「ちょっと墨の逆鱗に触れてしまいまして…… 」

また来ますと去っていった百目鬼を見送った。

「逆鱗ってなんだろ」

静まりかえった仕事場のドアを開けると端の方でうずくまっている墨の姿があった。

「墨? 」

由希が声をかけると墨はびくりと体を震わせた。

「由希か」

視線をあげた墨のそばに座ると、墨に抱きしめられ、すぐに腕から解放される。

首をかしげる由希に墨は困ったように眉を下げて笑った。

「ごめん、由希。 1人にしてくれないか? 」

墨のお願いに頷くと由希は家を後にした。

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