種族の違い
「たぶん、種族の違いだと思うよ」
棚の掃除をしていた大之助がぽつりとつぶやいた。
その日のお店はお休み。 数か月に一度、店の大掃除をする日で由希は大之助に言われて店を掃除していたときにふとこないだの大和と昂輝のやりとりを思い出していた。
もっと昂輝とスキンシップをとりたい大和の愚痴を聞いていたときに昂輝が現れたこと。
「僕、口にだしてました? 」
「うん、大和と昂輝でしょ? 仲良くしたい大和とあまりしたくない昂輝のこと。 口にだしていたからつい声をかけちゃった」
内緒と言われていたのにと由希は口を閉ざすもあとの祭りかとため息をこぼした。
「種族の違いって? 」
首をかしげる由希を大之助は家の中へと導いた。 居間に由希を座らせた大之助は台所から飲み物とつまむお菓子を持ってくるとそれを由希の前の台に置く。
「俺の母親であり烏天狗一族はスキンシップの激しい一族でね、外の目もはばからず仲良くすることで有名なの」
「手を繋いだりとか? 」
大之助はうーんと唇に手をあてて首をかしげて、由希の肩を抱いた。 そばに引き寄せた由希を膝の上に乗せた大之助は由希の顔をあげて頬に口づける。 びくりと身を震わせた由希の頭をなでた。
「その他もろもろいーろいろって感じ。 だから子だくさんの家族も多いよ」
ほんのりと赤くなっている由希の頬を撫でながら、大之助はうんとうなずいた。
「んで逆に犬神の一族てそういうのは淡白なの。 夫婦や恋人であっても過度にスキンシップとかしない。 子どもを作るときにそういうことをしたらいいやって感じ」
「でも、初めて昂輝さんに会ったとき昂輝さんから大和さんを求めていた気がするんですが…… 」
初めて出会ったとき。
昂輝に威嚇され、逢瀬を邪魔されたと攻撃されている。 いまではそんな姿は見ないものの、そのときの光景が由希の心の中で焼きついており、大之助の言葉は信じられなかった。
「あぁ、発情期だったんじゃない? 犬神がそんなことをするときって子どもがほしいか発情期のときぐらいだし」
大之助の言葉にむむと口をへの字に曲げた由希の姿に大之助は笑った。
膝から下りた由希はお菓子をつまみながら、大之助を見つめた。 ならばほとんど猫又である大之助はどうなのか?
烏天狗がそうなのであれば猫又は…… 。
わかりなくなり首をかしげる由希の姿にああと大之助は手を打った。




