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「私が女性に好かれることとは逆に弟は男性に好かれる体質だったみたいで。 とても苦労していたなぁ、気がつくと襲われかけていたりして」
先ほど考えた紅葉の想像をその弟に変えて、女性を男性に変える。 思わず身震いしていまった。
「やはり男性の力は強いので一人では対応しきれなくてよく兄さまと一緒にいることが多かった気がする。 私は甚一郎兄さまと一緒にいることが多かったので」
「いまは大之助さんと一緒にいないですよね? 」
「実家をでてしまって…… 私も数十年は会っていない。 どこにいったのか知らないし、知っているはずの兄さまはまったく教えてくれないから」
寂しそうな表情を浮かべた紅葉に由希はどう声をかけるべきだろうかと考えていると紅葉は由希の頬にもう一度触れて、にっこりと笑みを浮かべる。
その笑った顔がどこか甚一郎に似ていて兄弟だなと由希は思った。
「人に会ったのは久しぶりなんだ! 少しだけでいいから触らせてもらえないか! 」
瞳を輝かせて由希を見つめる紅葉の押しに負けて由希はうなずいてしまった。
由希の頭をなで、頬をなで、額に口づけ、柔らかいとつぶやく紅葉は由希を優しく抱きしめたところで帰ってきた大之助の足が紅葉に直撃した。 転がった紅葉をよそに由希をそばに引き寄せた大之助は何度も確認してなにもされていないことがわかると由希を解放する。
いつものラフな格好をした大之助ではなく、黒い着物を着こなした猫又が姿勢を正して立っていた。 思わず見とれていた由希に大之助はどう? と聞いていた。
「いきなり蹴飛ばすなんてなにごとですか! 」
「うるさい。 由希に手を出そうとしたくせにつべこべ言うな」
言い合う猫二人にどうしたものかと由希が思うも、あとからやってきた甚一郎に抱えられたことでなにも考えられなくなった。
「甚一郎さんも黒い着物なんですね、とても似合っています」
「お、うれしいことを言ってくれる。 久々に着たがそういわれたら悪くは思わねぇな」
由希の頬に口づけた甚一郎を蹴飛ばした大之助はシャーと威嚇する猫のような声をもらし、由希を抱えて居間からでていく。
「大之助さんもとてもかっこいいですよ」
「…… それならよかった」
大之助は台所に置いていたお菓子たちが一つも残っていないのを確認すると安心と由希を下ろした。
「あいつがいたおかげで店のお菓子がなくなってすっきりした。 また溜まってきたら頼もう」
溜まった食器を洗いはじめる大之助。 洗った食器を受け取って拭いていく由希はちらりと大之助を見つめて、やっぱり似合うなと思った。




