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モテるのも楽じゃない

「うわぁ」

由希は思わず声をもらした。

なにに?と聞かれるといつもはがらがらの店の中に様々な女性があふれていたから。

中だけではなく、入口まであふれている女性たちに由希は思わず顔をゆがめた。

表から入られず裏口から入った由希を待っていたのはにゃあと鳴く黒猫。

由希の足に体をすりつけて、由希を店のほうへ誘う。

「これは何事なの」

にゃあと鳴く。

店の先に一人の化け猫が愛想を振りまきながら、そしてどこか疲れた顔を浮かべながら接客していた。

「ありがとうございました」

化け猫の対応に女性たちはきゃあと高い声をあげながら店からでていく。

それを見送っては次に対応。 店の中にいた女性たちの対応を終えた紅葉と目が合うとやあと笑顔で挨拶をされた。

「えっと由希くん、だった、よね? 」

「そうです。 紅葉さんでしたよね」

やれやれと息を吐きだす紅葉は腰を叩きながら家の中へと戻っていく。

店の中にいつも置いているお菓子たちはひとつも無く、そこかしこがらがらで少し寂しくも感じた。

店の入口を閉めた由希が家に戻ると居間で腰を下ろしている紅葉の姿がある。 疲れたと体を倒した紅葉はあとからきた由希にお疲れ様、と声をかけた。

家の中もしんと静まりかえっており、家主である大之助の姿がない。

「大之助さんはどこですか? 」

「あぁ、兄さまは墓参りにいってるよ。 今日は命日らしくて甚一郎兄さまと二人で」

「墓参り? 」

「なんでも父さまの親友の方らしくて、私や弓弦姉さまが生まれる前に 亡くなったんだって。 とても世話になったとかで毎年、この季節になると出かけているよ」

 少しだけ休んだ紅葉は台所にいくとお茶を注いだ湯呑を由希の前に置いた。

「すみません、ありがとうございます」

 受け取った由希はそれを口に含んだ。 それを確認した紅葉は由希の目の前に腰を下ろすと由希の頬に触れる。 あごをつかみ、右目を覗きみて、首をなでて、由希の胸元を押すと背中からゆっくりと倒し

「手荒なことをしてごめんね。 君の飲物に薬を混ぜさせてもらった」

 なぜ? という由希の問いかけに紅葉は首を左右に振る。 

「かの人のことがあり、なにものにも興味をもつことのなかった兄さまが君に興味をもった。 特になにか力があるわけでもない、ただ人である君に」

 紅葉の指がゆっくりと由希の肌を伝っていく。 薬のせいで身動きのとれない由希はその光景を他人事のように見ていることしかできなかった。

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