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「いい加減にしろ」

 由希を再び懐に押しこんだ大之助は己の弟である男をにらみつけた。

「すみません、失礼しました。 人が珍しいのでつい」

「珍しいのはわかるが、そんなべたべたするな」

 由希に頭をさげた男。 由希はいいえと手を振って大之助の腹を撫でた。 由希を解放した大之助は食器を洗い終えると手を拭く。 由希の背中を押して居間に戻った。

 そのあとを男はついていく。

「あの、七海さんは? 」

「あいつは帰らせた。 ちゃんと家に帰らなかった場合、また怒るがな」

「どっかの誰かが厳しくするから嫌がるんだろうけど」

 大之助の発言に男はぎらりと兄をにらみつけて、由希の手をとった。

「そういえば名前を聞いていませんでした。 私は紅葉といいます。 もみじではなく、こうようです」

「由希といいます」

「父娘共々騒がしくしてしまい、すみません。 兄様も由希くんに迷惑をかけていないでしょうか? 」

「うるさい」

由希の背中を押して台所にでていこうとする大之助にああと思い出したように紅葉は手を打つ。

「ここにきたのは伝言もあったのです。 もうすぐなので実家に戻ってこいと父様より」

もうすぐという言葉に大之助はあぁとだけ返事を返した。

どういう意味なのかをわからず首をかしげる由希にいいからと頭をなでて店のほうへと押しだした。

お客様のいない店の中を見て周り、掃除。 ときおり、美味しそうなお菓子に喉を鳴らしながら片付けていると紅葉が店へとでてくる。

話は終わったのか、乱れた衣服を整えた紅葉はもう一度由希に頭を下げた。

「失礼しました。 私は七海のところにいきます」

由希の背中をなでて、額に口づけ一つ。

「兄様をよろしくお願いします」

それだけを告げて嵐のように去っていった紅葉と娘である七海。 賑やかっだったなあと由希がため息を吐きだしたと同時に疲れた顔の大之助が店に顔をだした。

「なんであいつらはなにかあるとここにくるんだか」

苦笑いをこぼす由希を胸に押しこんで抱きしめると再び家の中へと戻っていった。

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