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「兄様ー!! 七海は来ておりませんか!! もしくは七海をたぶらかせていないですか!! 」
勢いよく開かれた店の扉から一人の男が滑りこむ勢いで店の中へと入ってくる。 遠くからでも足音の響く男は鼻息を荒くしながら大之助の前に立った。
身長は大之助に比べて多少背が低いくらい。 黒い猫の耳とゆらりと揺れる赤に近い黒の尾をもったその男は大之助につめよる。 近いと大之助に顔を押された男はすみませんと一歩下がった。
「あーなんで来たのさ! いい加減、娘離れをしなよ! 」
あとからやってきた七海が呆れたとため息をこぼす。 七海の姿を見つけた男は安堵の息をもらし、七海のそばに立った。
「なんの連絡もせずにここにきて心配したじゃないか! どこにいくか連絡くらいしないか! 」
「どうせ連絡しなくったってここにくるじゃんかぁ、だったら別にいいじゃん」
二人で言い争う猫たちをよそに大之助はお菓子を並べて、由希を抱えて家の中へと戻っていく。
「いいんですか? 放っておいて」
「大丈夫、いつものことだし。 そのうちおさまるからいいでしょ。 相手をするのが面倒くさい」
由希を台所におろした大之助は使った食器を洗っていく。 手渡された布巾で由希は食器を拭いていく。
「大之助さんって何人兄妹がいるんですか? 」
由希の問いかけに大之助は首を左右に振って、うんと声をもらして指で数えるもやめてしまった。
「さあ……? あの親父の気分で増えていくからわかんない。 いまのところは大和が一番下ということしかわかんないや」
なんか乱れてると心で由希は思ったが口には出さなかった。 そんな由希の表情から読み取ったのか大之助はなにも言わずに食器を洗っていく。
「いっぱい兄妹がいるとにぎやかそうですね」
「とてもうるさいよ。 わーわーいうからなんの話をしているのか途中でわからなくなるし、兄弟喧嘩をし始めたらきりがないし」
特にと大之助が口にする前にあのにぎやかな足跡が台所にやってきた。 男は台所に入ってくると大之助に頭を下げる。 由希もつられて頭をさげると男は首をかしげた。
由希の目の前に立った男は由希を覗きこみ、じっくりと観察をして由希の頬をなでて、瞳を舐めるように見つめ、うんと声をもらす。
腰を抱き寄せて背中を撫で、抱きしめる。 由希がひいと声をもらすも気にしないように触れて、最後に口を開いたところで大之助の拳が男に叩きこまれた。




