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現代の怪談―The Contemporary Kaidan―  作者: 坂本小見山
14.''Tai Yin, Epilogue'' 「破滅の果てに」
40/42

最終話・前半

[最終話]

(一)

 冷たい夜。

 鉄道会社を異にする駅と駅の間の広場は、師走にあって相変わらず賑わっていた。


 道往く人々に化粧紙を配る者、襤褸切れに身を包んだ路上生活者、宣伝のプラカードを掲げるホスト・クラブの従業員・・・。



 人群れの中を、一人の女性が歩いていた。

(平和なものね。誰も、自分たちが巨大な怪奇現象の只中にいることに気付いてないなんて。)


 心の中にてそう呟いて、濃緑のスーツに身を包んだ園里香(そのりか)警部は、京阪電車・京橋駅の改札口を越えた。



(二)

 園は、大阪府警・新寝屋川署(しんねやがわしょ)の署長室に至った。

「お久し振りです、警視。」

「待っていた。まあ掛けてくれ。」

 署長の椅子からそう言ったのは、禿頭の老紳士、川添仁(かわぞえじん)警視であった。


 川添は、溜息に言葉を乗せるように言った。

「大阪基地も沈んだ。」


 その言葉は、取りも直さず、この新寝屋川署の特殊課が、関西に残された最後の砦となったことを意味していた。

「生き残った関西の特殊刑事たちは、ここに転勤して来ることになっている。共に『ある任務』を遂行するために。」

「その任務とは?」


 川添は、答えずに立ち上がり、窓の傍に立った。

「三年前より、ずいぶんと灯りが増えたものだ。」

 園もその近くに行き、夜景を眺めた。ところどころに、けばけばしい、下品な灯りの群れが、島のように点在していた。それらは全て、新興の風俗店や、ラヴ・ホテル街のものであった。


 川添は、夜景を見ながら言った。

「太陰怪獣との戦争が始まってから、性風俗の悪化した地域が日増しに増えている。目に見えぬ焦土が、この国を包み込もうとしているのだ。一方、奴は、一定量の違法風俗産業の黙認と、特殊課の解散を条件に、世を乱すことをやめると言ってきている。」

「そんな申し出を受ける訳にはいきません。」

「そんなことはもはや言っていられないのだよ・・・。」

 そう言った直後の暫しの沈黙が、戦況の絶望的なるを語っていた。


 川添の耳に、園の答えが返ってきた。

「解りました。」と。

 川添は、園の目を見た。彼女の顔には、寂しげな微笑が浮かんでいた。


 川添は、溢れんとする涙を耐えて、平生を装って言った。

「新体制の特殊課の任務は・・・『敗北』だ。」



(三)

 翌朝。新寝屋川署の、久しく使われていなかった狭い一室に、機動隊の乱闘服に身を包んだ警察官たちが集っていた。十人に若干届かなかったが、六畳あるなしのこの部屋を紺色で埋めるには事足りた。


 壇上に、同じく乱闘服姿の若い警察官が上がり、声を上げた。

「諸君!特殊課はもはや奸賊と成り果て、怨敵に人類の尊厳を売り渡す算段を始めた。我々はこれより、特殊課と決別し、新たに『ネヤガワ抵抗戦線』を旗あげする。私はその隊長として、この街を守る大義ある戦いを先導しよう。奇遇にも冠した、我が名に恥じぬよう。」


 そう言った彼こそは、長髪を切り落とし、風貌が変わりに変わった、あの閨川守(ねやがわまもる)であったのだ。


 彼は、「ねやがわまもる」と訓ずる名の自分が、新寝屋川署で敵と戦うことになったことを、不可思議な縁に因るものと信じるようになっていた。そしてそれにつれて、彼は、自分の戦いの大義もまた、不可思議であり、無条件に受け容れねばならぬ、数学の公理のようなものだと考えるようになっていたのだ。それが彼の出で立ちをも、彼自身気付かぬ内に、少しずつ豹変せしめて今に至るのだ。



(四)

 その夜、閨川は、アダルト・ヴィデオ業者を別件で家宅捜索し、摘発した。ここ、大阪市・日本橋(にっぽんばし)は、性産業の温床であったのだ。


 一人の隊員が、押収されてゆく商品を横目に、閨川に言った。

「隊長、私には解りません。性欲は生物にとって必要なものなのでしょう?それなのに、なぜ我々はそれを取り締まらなくては・・・」


 隊員の言葉が終わらぬうちに、閨川の平手が隊員の頬をバシッと打った。

「必要なものなどではない!断じてない。これは人間の原罪だ。人間はこの原罪によって産み落とされ、やがて自らの内にも同じ原罪を育てるのだ。」

 閨川は他の隊員の面々を見渡した。

「思い出せ。幼少の時分を。誰しも、性を嫌っていたはずだ。そのまことの理に忠実を期すべし。これだ!いいか!」



 一同がパトロールカーに乗り込もうとしたとき、彼を呼び止める、女性の声があった。

「閨川刑事だろう?」

 見ると、けばけばしい服装の壮年女性であった。

「あんたは?」

「半年前、あんたに潰された売春宿で働いていた者さ。ここでガサ入れがあると聞いて、もしやと思って来てみたんさ。」

「用は何だ。」

「何、ひとこと言っておきたかったのさね。あんたはとんだ偽善者だ。あれでも、私らにとっちゃ、飯の種だったんだ。それをあんた方が潰したせいで、私らは失業者だ。」

「その様子では、もっと劣悪な店にでも再就職したのだろう。私が偽善者なら、お前は臆病者だ。お前には、例え(かつ)えて死のうとも自らの尊厳を守る勇気がないのだ!」

「言わせておけば!」

 女性は閨川に掴みかかったが、隊員たちに引き離された。

「綺麗事で借金が返せるかい!」

 女性はそう捨て台詞を吐いて、立ち去っていった。



 折しも、警察署の部屋で待機している隊員から連絡があった。太陰怪獣が襲来したというのである!



(五)

 数時間のち。


 閨川たちは、瓦礫の山の中で力なく立ち上がっていた。瓦礫の所々には、火の揺らめきも見えた。彼らは、太陰怪獣に強かにやられたのだ。


 日本橋の街は、多くの建物が破壊されていた。

 これほどの大事にも関わらず、民衆は、まるでそれを意に介してはいなかった。あたかも、目に入っていないかのように。


 まだ破壊されていないビルの谷間から、ぬっと、宙に浮く巨大な肌色の立方体が現れた。太陰怪獣であった。

 立方体の一つの面に、桃色の、大きな一つの目があり、それがギョロリと閨川たちを見た。

「フハハハハア!お前たちは、まだレジスタンス精神を振りかざしておるのか!そろそろギヴ・アップしたらどうだ!」

 太陰怪獣はそう豪語した。



「ちょっと、お巡りさん、気をつけて下さいよ。」

 そう言ったのは、閨川がよろめいた拍子に突き飛ばしてしまった、遊び人風の青年であった。

 民衆には、閨川たちの戦いが、ちゃんと見えていたのである。にもかかわらず、彼らには、この惨劇に問題意識を向けることができないのだ!



 そのとき、どこからか、サイレンの音が近付いてきた。閨川たちがその方向を見たとき、丁度、何台かのパトロールカーが敵との間に立ち塞がった。


 車から降りてきたのは、特殊刑事たちだった。その先頭には、園がいた。

 太陰怪獣は言った。

「新手が来ても一緒であるぞ!」


 特殊刑事たちは銃を取り出すと、目の前に捨てて見せた。園も銃を捨てたが、腰に帯びた愛刀は捨てなかった。

 彼女は前に出て言った。

「特殊課は降伏の意を表し、攻撃の中止を要求します。後日、署長が正式に敗戦調停に伺います。」

 その言葉は、閨川たちを戦慄させた。


「利口な判断だ。今月二十五日の午前零時、寝屋川タワー前で待つ!」

 そう言うと、太陰怪獣は暗雲の上へと姿を消してしまった。

 特殊課の面々もまた、車に乗り込んで行った。

「里香!」

 閨川に呼び止められ、園は一瞬立ち止まった。そして、遺憾の念を帯びた目を閨川にくれて、車で立ち去ったのだった。



(六)

 閨川たちが本部室に帰り着いたとき、すでに夜は明け、師走に入って十八番目の朝となっていた。

「隊長、ここではっきりさせて下さい。我々に、勝機はあるのでしょうか。」

 そう言った部下を、閨川は顧みた。

「ある。我々は必ず勝つ。」

「私がお訊きしているのは、理想論ではありません。勝利の可能性が、犠牲を払うに値するのかどうかです。」

「『値するのか』だと?貴様、我々の大義を天秤に掛けようと言うのか!」

「倒すことも封印することもできない敵と、討ち死にするまで戦えとおっしゃるのですか!」

「この間の阿婆擦れを思い出せ。あの女は、生きるために尊厳を売っているのだ。貴様もああなりたいのか!」

「言わせていただこう。あなたは、敗北から逃げているだけだ。駄々を捏ねている子供のようにね!」


 彼は、殴られる覚悟で言い放った。だが、予想に反して、閨川は口をつぐんで彼の目を見据え、うっちゃるように言った。

「ああ、ああ、そうだ。私は駄々を捏ねている子供だ。私の駄々に付き合いたくない奴は、出て行っていいぞ。」



 その隊員が立ち去ったのを皮切りに、隊員たちが次々と部屋から去って行った。潮が引くように。閨川は、去り行く隊員たちを顧みもせず、呆けたように突っ立っていた。


 彼は、気力が、まるで初めから無かったかのように、いつの間にか抜けているのを感じた。


 だが、それは束の間であった。彼の許に、二人の若い隊員が歩み寄り、言ったのだ。

「自分は大義のために死する覚悟であります。」

「自分もであります。」

 彼らの言葉を聞いたとき、俄かに、再び、大義への確信が湧出した。

茅嶋(かやしま)友呂岐(ともろぎ)。ありがとう。我々三人で、地獄への行軍を成し遂げる覚悟があるか。」

「イエス・サー!」

「イエス・サー!」

 こうして、ネヤガワ抵抗戦線はたった三本の、しかし強固に束ねられたる槍となったのだった。



(七)

 その頃、特殊課に、五人の珍客があった。

 代表の中年男性は、長崎の大学の教員で、生命倫理がらみの文筆家として知られる、島田裕(しまだひろし)であった。嘗て、「化け蛙」事件で、麻咲(まさき)イチロウに救われた男である。


 五人の中には、彼の親友の北村や、「湖に潜むもの」事件で閨川と麻咲に助けられ、現在は銀行員になっている藤沢の姿もあった。 他の二人も、麻咲に助けられた者であった。


 応接室にて、島田は言った。

「我々はペンスピナーから希望をもらって、立ち直ることができました。我々は、目玉シールの力でこの希望を実体化させ、太陰怪獣を退治しようと考えています。」

 一人で応対していた園は、それを聞いて驚いて目を見開いた。三年前の戦争の後、残った何枚かの目玉シールは、研究のために保管されていたのだ。

「あなた方は、それらの情報をどこから入手したのですか?」

「『ある人物』が、我々を集め、情報を与えてくれたのです。名前も素性も明かしませんでしたが。」

「にしても、リスクが大きすぎますわ。目玉シールが生み出したのは、邪悪な怪獣や怪人ばかりだったのですから。」

暗黒旋士(あんこくせんし)とやらは、実体化後も、自分の意志で行動していたと聞いています。金のシールを使えば、対象を変質させずに実体化させることができるはずです。」


 園は、暫く考えた。その挙句、彼女は、格納庫に彼らを誘ったのだ。


 彼女は、事々しい機械設備の中から、厳重に封印されている金のシールを取り出した。

「私が全責任を持ちます。しかし、これは特殊課の方針とは関わりのないことですから、実体化した怪獣がどんなものであれ、我々はそれを敵と見做して攻撃します。それを承知の上で、お使い下さい。」

 そう言って園は、シールを島田に渡したのだった。



(八)

 十二月二十日、園は署長室に呼び出された。格納庫のコンピュータに残っていた情報から、園の独断がばれたのだ。

「覚悟はできております。懲戒免職にでも何にでもなさってください。」

「君を首にするのはいつでもできる。だが、これによって交渉が決裂したら、どう責任を取る。」

「私をくびにして、これが特殊課の意向ではないということを明確にしさえすれば、敵を欺いたことにはならないはずです。」

「問題はそれだけではないのだ・・・。」


 川添は、意味ありげに俯いた。そして言った。

「太陰怪獣は『封印』せねばならない。だが、『殲滅』してはならんのだ。古代において、ライフが奴を倒そうとした。だが、古代人は、ライフも太陰怪獣も、共に封印した。それがどういうことか、解るか。」


 園は、言われてハッと思い出した。三年前、太陰怪獣が言った言葉を。

 太陰怪獣は人類の繁殖本能の化身であり、ゆえに、これを倒すと、人類は滅んでしまうのだ。

だから、あくまで、封印にこだわらねばならないのだ。


 そのとき、園は、別のことにも気付いた。

「この三年間で、我々は二度、太陰怪獣を殲滅する兵器が製作しましたが、二度とも失敗でした。閨川警部たちも三度目の実験に失敗したと聞いています。あれは、あなたの差し金ですか。」

 川添は、黙して答えなかった。


 園は、挨拶もなしに部屋を辞そうとした。

「知らせるつもりならやめろ。設計図から改竄してあるから、あと四日で一から作り直すのは不可能だ。知らないほうが幸せなのだ。」

「彼らは彼らなりに、必死で人類の尊厳を守るために戦っているんです。彼らには、知る権利があります!」


 そう言って、園は出て行ってしまった。



(九)

 園が一部始終を話し終えたときの、閨川たち三人の落胆は一通りのものではなかった。もはや、憤慨する気にもなれなかった。


 閨川が何かに気付いたように目を見開いた。

「三年前の、ライフ復活の儀式のとき、川添の計らいで各地の特殊刑事が集まってきたが、あれはもしや・・・」

「有り得るわ。手伝うためではなく、邪魔するためだったのかも知れないわ。」

「何と言うことだ。最初から我々は蚊帳の外に置かれていたんだ・・・。」


 そのとき、友呂岐が立ち上がり、乱闘服の上着を脱いだ。

「貴様、どこへ行く。」

 友呂岐は、閨川の問いに答えなかった。

 次いで、茅嶋も立ち上がり、友呂岐に付いて行った。

「貴様たち、この前の気迫はどこへいった!」

 茅嶋は、出て行く間際に答えた。

「死力を尽くして戦うことすら、我々には許されていなかったということですよ・・・。」

 そう言いながら、彼も出て行ってしまった。



 閨川は、座ったまま言った。

「私は戦うぞ。一人でも。」

 園は彼の隣の椅子に腰掛けて言った。

「三年前、守君、言ったじゃないの。保守と革新が手を携えあって、共に戦うべきだって。あのあなたはどこに行ってしまったの?」

「今更、退けぬのだ。退けぬのだ・・・!」

 そう言って歔欷を漏らす彼の震える肩を、園がそっと抱いた。彼はそのとき、園の腕を振り払う気概すらなくしていたのだった。



(十)

 来たるべき十二月二十五日、午前零時直前。


 電話局の建物の屋上から、巨大な相輪のような形の、白い鉄塔が天を指して伸びている。やや灰色味を帯びた上品な白色のこれこそは、美貌の塔「寝屋川タワー」なのである。


 この建物の前に、簡易の会見場が作られていた。クリスマスの電飾が彩る街で、彼らは太陰怪獣を待っていたのだ。



 俄かに暗雲が立ち込め、そこから、太陰怪獣は現れた。


 太陰怪獣は舞い降りながら、小さくなった。やがて着地したときには、その姿は、桃色のローブを羽織った道明寺(どうみょうじ)のものになっていた。

 彼は、辺りを見渡して、開口一番に言った。

「クリスマスというものは、実に清らかなものよ。」

 敵の口から出た思わぬ言葉に、特殊刑事たちは面食らった。

「その清らかな夜を、一体どれ程の人間が陰で穢しているであろう?だがなあ、人間どもよ。彼らもまた、嘗てはクリスマスを清らかな心で迎えていたのだよ!彼らは、嘗て愛した美しいものを、何の躊躇いもなく汚染するほどにまで豹変してしまったのだ。これこそ、わが偉大なる(パワー)なのである!」

 一同は、それを聴いて、敵の力の凄まじさに気付き、慄然とした。敵はこの周到な計画のために、この夜を敗戦調停に指定したのだった。



 川添が立ち上がり、一同の前に歩み出て、恭しく敗北宣言を始めた。

「七十一年前、我が国が大きな決断を下したとき、ときの国家元首がこう言われた。『堪え難きを堪え、忍び難きを忍び』と。」


 園は、それを聴いたとき、自分の頭蓋骨の中を、敗北の屈辱感が駆け巡り始めたのを感じた。


「我々もまた、ここに、已むなき決断をする。我々は、三年に亘り抵抗に最善を尽くしてきたが、戦況は好転の兆しを未だ現しておらず・・・」


 敗北宣言が延々と続く中、敵は、園の握りしめられた拳が小刻みに震えていることに気付いた。


「・・・我々は情勢に順い、将来の為に、不毛な悪戦を終結させたく思い、ここに和平の受け入れを要求するものである」



 宣言が終わったとき、園が慟哭し、泣き崩れた。泣き喚く園を、隊員たちが他所に連れ、川添は、太陰怪獣に不始末を詫びた。


 だが、太陰怪獣はニヤリと笑って言った。

「連れて行かずとも良い。こちらの条件を追加だ。その女の尊厳を所望したい。」

 傍らで聞いていた園は慄然として振り向いた。

「そのプライドの高い女を、成人映画に出演させるのだ。偉大なる性欲の勝利を象徴して。」

「貴様・・・!」

「それがなければ、降伏は受け容れぬぞ。」


 川添は悔しさのあまり唇を噛み、口角から血を流した。



 そのとき、抵抗する園を取り押さえる隊員たちを、突風が吹き飛ばしたのだ。


 そこに、閨川が乱入し、園に手を差し伸べた。

「里香、掴まれ!」

 その言葉に従って掴まった園を連れて、閨川は超能力で跳躍し、逃げてしまった。


「探して連れて参れ。」

 太陰怪獣は言った。



(十一)

 そのころ、寝屋川市に隣接する四条畷市にある、高台の広大な公園に、島田たち五人が集まっていた。


 彼らは手を重ね合い、その上に目玉シールを置いた。

(希望よ、どうか太陰怪獣から人類を救ってください・・・。)

(我々の希望が、我々に平和をもたらしてくれますように・・・。)

 彼らは一心に祈りを捧げた。



(十二)

 一方の特殊課は、閨川と園を探したが、近辺にはいなかった。


 それもそのはず、閨川と園は、遠くに逃げると見せかけて、寝屋川タワーの基部の建物に転がり込んでいたのだ。

「奴らがここから離れている内に、どこかに移ろう。」

「どこに逃げても一緒よ。人間のいるところには必ず性欲が存在するから、世界中どこにも逃げ場はないわ。」

「逃げるばかりが全てではない。共に戦うのだ。」

「いや、自分の大義には、自分で蹴りをつけるわ。私は剣士・園里香よ。」

そう言うと、園は閨川の隙を突いて、腹に当て身を入れた。

「ごめんなさい、守君。私には、やるべきことがあるの。」

 痛みに蹲る閨川を尻目に、園は階段を上って行った。

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