第九話 クリスマス
修行から帰って来て数日。
今日はクリスマスです。私は毎年家族とクリスマスケーキを食べて過ごしています。
恋人と過ごしてみなさいよ。とお母さんは言いますが、そもそもそんな人がいません。
……でも、今年は……。
「美琴ー!友達が来てるわよー!」
「あっ、はーい!」
お母さんの呼ぶ声が聞こえ、現実に引き戻された私は部屋を出て玄関へと向かいます。そこいたのは。
「島塚君!?」
「よ」
軽く右手を上げる島塚君。お母さんはニヤニヤと笑っています。
「美琴も隅に置けないわねー。いつの間に彼氏なんか作ったのよ?」
「え、いや、違っ」
「…………」
島塚君は何も言わずに笑っています。……あれ?いつもなら何か恥ずかしい台詞を言ってくる筈なのに。
ごゆっくりーとお母さんがリビングへと消えた後、島塚君が言いました。
「美琴は今日、暇?」
「あ、はい。夜は家族でパーティ……というよりケーキを食べるだけなんですけど……」
「じゃあ、遊びに行かね?」
「えっ」
「ここのところ修行やらなんやらでゆっくり出来なかったから。駄目?」
「……駄目、じゃ、ないです」
決まりだな。と嬉しそうに笑う島塚君。これってまさか……デートですかね?
いやいやいや!島塚君とはお付き合いしてませんし!遊びに行くだけです遊びに!!
「美琴?」
「な、何でもありません!準備してきますね!」
島塚君と一緒に商店街を歩きます。やはりクリスマスだからか、カップルが多いです。
……私と島塚君も、はたから見たらカップルに見えるのでしょうか……。
「ゲーセン行こうぜ美琴」
「はっ、はい!」
島塚君の言葉で現実に引き戻された私は、島塚君と一緒にゲームセンターの扉を潜りました。
私はあまりゲームセンターというところに来たことがありません。なので音楽ゲームやガンシューティングなどを島塚君と一緒にやりましたが下手くそでした。
島塚君はとても上手でした。
「……あ」
UFOキャッチャーのコーナーを見ていると、コネさんのぬいぐるみがありました。コネさんというのはとあるアニメの猫をモチーフにしたキャラクターで、私の好きなキャラクターです。
「……欲しいですけど……取れませんよね……」
自分のゲームの下手さは良く分かっているので、諦めようとした時でした。
島塚君が、UFOキャッチャーにお金を入れて、あっさりとコネさんをゲットしたのです。
「ほら」
島塚君はコネさんを私に差し出します。
「え……良いんですか?」
「その為に取ったから。クリスマスプレゼント」
「……ありがとうございます……」
私はコネさんを受け取り、抱き締めました。もふもふで気持ち良いです。
あっという間に夕方になり、家への道を島塚君と歩きます。
「あの……今日はありがとうございました」
「楽しかった?」
「はい。とても」
「なら良かった。俺も楽しかったよ」
「……あ」
「……美琴?」
「島塚君……これ、受け取ってもらえますか?」
渡すタイミングを逃していたプレゼントを島塚君に差し出します。
中身は青い結紐。
「……ありがとう」
島塚君は嬉しそうに笑って、早速髪に付けてくれました。やっぱり島塚君には青が似合います。青い炎の色。
途中、公園が目に入りました。
初めて妖魔を見て、
島塚君のパートナーとなった場所。
たった二ヶ月足らずのことなのに、酷く懐かしく感じました。
もし、妖魔がいなかったら。
私が神子でなかったら。
きっと、島塚君とは出会わなかったと思うのです。
だから。この出会いを大切にしたい。
「島塚君」
「ん?」
「これからも、宜しくお願いしますね」
「……ああ」
これから先、何があってもきっと大丈夫。
島塚君と、一緒ならーー。