第七話 強くなりたい
「……う……」
目を開くと、最初に見えたのは見知らぬ天井でした。
「美琴ちゃん!良かった。目が覚めたのですね」
「……歳子、さん?」
声が聞こえた方を向くと、歳子さんの姿がありました。
…………ええと…………私は、確か…………。
「……皆さん……島塚君、は、」
声が上手く出せません。何とかそれだけ言うと、歳子さんは視線を伏せて言いました。
「山田さんと家久は大したことありませんわ。葉ちゃんも傷は深いけれどなんとか一命は取り留めています」
「そう。ですか……良かった……」
「…………話は全て、家久から聞きましたわ。その傷、家久にやられたのでしょう?」
「…………」
私は自分の首に手をやります。そこには包帯が巻かれていました。
「……あの、島塚君、は」
「……自分の部屋にいますわ。二階の階段を上がってすぐの部屋ですわ」
有難うございます。とお礼を言って、私は布団から起き上がります。
島塚君に会いたい。それしか考えられなくなっていました。
「島塚君」
コンコンと二回ノックしましたが、反応がありません。ドアノブを捻ると、鍵は掛かっていませんでした。
中に入ると、島塚君はベッドの上で体育座りをし、顔を埋めていました。
「……美琴……?」
顔を上げた島塚君の顔には、殴られた跡が。思わず駆け寄りその痛々しい頬に触れます。
「……姉ちゃん達に殴られた。お前は禁忌を破った挙句、パートナーを危険にさらしたのかって」
「そんな……」
「……妖魔の肉を食うことは禁忌なんだ。確かに力は増幅する。けど自我を失って最終的には妖魔の仲間入りになっちまうから」
「っでも、あの時は、他に方法が……」
「俺もそう思ってた。けど……美琴を傷付けた」
突然強い力で抱き締められます。島塚君の身体は震えていました。
「島塚君……」
「美琴を守るって言っておきながら、美琴を殺そうとしてた。俺は」
「……もう、自分を責めないで下さい」
そっと背中を摩ると、島塚君の震えがなくなりました。
「島塚君はあんな状態になっても、私を守ろうとしてくれたじゃないですか」
「……美琴……」
「だからもう。前を向いて下さい」
「…………」
島塚君の唇が、私の首の傷辺りに包帯越しに触れました。触れられたところからじんわりと熱をおびます。
「……もう、美琴を傷付けない。約束する」
「はい」
「……一緒に来て欲しい所がある。いいか?」
「……はい」
島塚君と共にやってきたのは、義子さんのところでした。島塚君は姿勢を正して義子さんを真っ直ぐに見て、言いました。
「義子姉ちゃん。
俺、もっと強くなりたい。強くなるにはどうすればいい?」