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鬼と猫又と私  作者: 悠里
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第四話 ライバルは突然に

「はあっ!」

『ギャウン!!』


島塚君の蹴りが、狼のような影の妖魔に当たります。

一匹一匹は弱い妖魔のようですが、数が多く十数匹はいます。


「島塚君!後ろ!」

「ーーっ!」


島塚君の背後から襲いかかる一匹の狼。対応が遅れ、避けるのが間に合っていません。


『キャウン!!』

「!」


突如、現れた氷の壁。

狼は氷漬けになっています。


「ふん。まだまだだな家久。この程度の妖魔も一人で裁けねえなんてな」


そう言って現れた人は、雪のように真っ白な髪はオカッパに、大きめの瞳は青色ーー、そして学ランを着ていました。


「……(よう)。お前、なんでここに……」


島塚君はこの人に見覚えがあるようです。お知り合い。なんでしょうか?


「ふん。お前が退魔師としての力に目覚めたというからわざわざ来てやったんだ。これで対等に勝負が出来る」

「いや、お前昔から一度も俺に勝てたことねえじゃん」

「と……とととにかく!勝負だ家久!妖魔をどちらが早く倒せるか!」

「……あの、あの二人、お知り合いなんですか?」


ヒソヒソと又三郎さんに聞いてみます。

そうじゃのう。と又三郎さんはニヤリと笑います。


「あやつの名前は樺地(かばじ)葉。家久の幼馴染みというやつかのう。昔から事あるごとに家久をライバル視しておった」

「……樺地さんの家も、もしかして」

「退魔師じゃな。もっとも、先程の攻撃からも分かったと思うが、我等鬼とはまた違う一族じゃ」


そこまで又三郎さんが説明すると、執事服を着た男の人が現れました。年齢は私達よりも少し上のようです。


「失礼致します。葉様。

この辺りに新たな妖魔の気配を感じます。勝負にはうってつけの相手かと」

「ふん。流石は山田だ。お前のとこの見ていることしか出来ないパートナーとは違って俺のは優秀だ」


山田というこの人が、樺地さんのパートナーのようです。


「美琴を悪く言うな。美琴はちゃんと頑張ってる」

「島塚君……」

「…………ふん!いいか、明日の25時に戦う!逃げるなよ家久!」


今、物凄い殺気に満ちた目で樺地さんから睨まれたんですが……何故でしょうか……。








翌日。

私達は、山田さんの案内で昨日の場所から少し離れた小さな沼へとやってきました。


因みに樺地さんは普段は黒髪に茶色の瞳と普通の姿のようです。



「確かになかなかの力だな……ふん。俺にかかれば一撃だがな!山田!」

「はい。葉様」


樺地さんが山田さんの首に腕を回します。山田さんも少し屈んで、そしてーー。

唇同士が、触れ合いました。


「え、ええええええっ!!」

『言ったじゃろ。我等とは違う一族じゃと。当然契約内容も異なる』


いや、それはそうなんですけど!いくら契約とはいえ男同士で……。


「……美琴?」

「はっ、はいっ!?」


島塚君がじっと私を見つめています。島塚君は暫く考えるような素振りを見せた後、こう言いました。


「美琴もキスしたいのか?」

「え、ええっ!!」


なな、なんでそうなるんですかっ!?


「俺はしたいけどな。美琴とキス」

「~~っ!」

「……っお前ら!!イチャイチャしてねえでとっとと変身しろ!!!」

「は、はい!すみません!!」


なんやかんやで鬼の姿になった島塚君と、樺地さんは沼に向かって歩きます。

ごぽごぽっ、と沼から、スライムのような半透明な妖魔が現れました。


「……はっ!」


島塚君が一気に妖魔との距離を取り、拳を振るいます。


「ーーっ!」


しかし、効いていないどころか底なし沼のようにずぶずぶと島塚君の腕が飲み込まれていきます。


「全く世話の焼ける!」


樺地さんが島塚君の腰に抱き着き、なんとか引っ張りだします。


「さんきゅー。葉」

「ふ、ふん!勘違いするなよ!お前を助けたわけではなく、俺が攻撃するのに邪魔だったからだ!」


真っ赤になって否定する樺地さん。……ツンデレ?というやつでしょうか。


「俺の力で氷漬けにしてやる!」


樺地さんが両手を突き出すと、妖魔が氷に包まれます。


「やった……!ふん!どうだ家久俺の勝ちーー」

「っ、危ねえ!」


島塚君の方を振り向いた樺地さん。その背後で妖魔が水で出来た鎌状のものを投げつけます。

それは樺地さんの学ランの胸の辺りを掠めました。


「きゃあっ!!」


…………ん?

「きゃあ」?


声が聞こえた方を見ると、樺地さんの切り裂かれた学ラン、そこから見えるサラシと、たわわな胸ーー。

も、もしかして…………。


「樺地さんって、女の子……!?」

『はて、言ってなかったかのう?葉は雪女の一族じゃ』


又三郎さんがニヤニヤと笑っています。こ、この(ねこ)は……!


「う、ううう……」


顔を真っ赤にして、両手で胸を隠し、ぺたんと座り込んでしまった樺地さん。

そこに自分の上着を被せる島塚君。


「勝負は一旦おあずけでいいか?」

「……くっ……」

「じゃ、ここからは協力して敵を倒すということで」


島塚君は妖魔に向き直ると、妖魔に向かって走り出します。繰り出される鎌状の水は、樺地さんが凍らせて砕きます。


「はあっ!」


樺地さんが再び妖魔を凍らせます。そこに何度も島塚君がパンチを繰り出します。


氷が割れ、妖魔はバラバラになりました……。





「くそっ、くそっ、あと少しで勝てたのに!」


悔しそうに樺地さんが言います。そして島塚君を指差していいました。


「いいか家久!俺はいつか必ずお前に勝つ!だから……勝ったら俺をよ、嫁にしろっ!!!」

「え」

「………………」


もしかして樺地さんって、島塚君のことが……。

そして二人は、嵐のように去っていきました……。


「……ガキの頃から言ってんだよな。嫁にしろって」

「そ、そうなんですか……島塚君も大変ですね……」

「……嫁にしたい奴は、もう決まってるんだけどな……」

「え?」


島塚君がぼそりと言った言葉は、聞こえませんでした。

ただ、『青春よのう』と又三郎さんがニヤニヤと笑っていたのです……。





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