第十三話 妖魔王との再戦
「……何の用だ」
島塚君が私を守るように前に出ながら妖魔王を睨み付けます。その光景に妖魔王は子供のような笑顔を浮かべました。
『安心しなよ。今日は何もしない。君達に話があって来たんだ』
「……話?」
妖魔王は頷くと、右手を上げ空を指さします。
『一週間後の零時丁度。妖魔達が一斉に日本という国を襲う』
「なっ……!?」
『妖魔達を止めるには僕を倒すことだ。僕はそこの公園で君達が来るのを待っているよ』
妖魔王が視線を向けたのは、例の私達が初めてパートナーになった公園でした。
そんな……妖魔達が一斉に日本を襲うなんて……。
『じゃあね』
「待て!!」
それだけ言うと、妖魔王は消えていきました……。
私達は島塚君の家に戻ると、直ぐにこの事を伝えました。すると義子さんは全国にいる退魔師にこの事を伝えました。
勿論、樺地さんや堂本さんにも。
「あの餓鬼、ふざけてやがる!俺達二人で倒してやろうぜ家久!」
「……いや。奴は俺が一人で倒す」
「島塚君!?何を言い出すんですか!?」
島塚君の言葉に驚愕します。幾ら修行で強くなったとはいえ、あの妖魔王に一人で立ち向かうなんて……!
「奴は、俺がやらないと駄目なんだ」
「島塚君……」
一体その目には、何が見えてるんですか?妖魔王が、それを望んでるんですか?
「ちっ、分かったよ。但し、絶対に勝てよ家久!」
「ああ、分かってる」
そう言って微笑んだ島塚君が、遠くに行ってしまいそうで。湧き上がる不安を止める術が見つかりせんでした。
そして、一週間後。
私達は妖魔王が現れるのを待っています。今日は一際寒く、身体の震えが止まりません。
いえ、身体の震えが止まらないのは、寒さのせいだけではありません。
「寒いのか?美琴」
島塚君が自分が付けていたマフラーをそっと私の首にかけます。少し、身体の震えが治まったような気がしました。
「あ、ありがとうございます」
お礼を言った私に、島塚君が笑った。
その時でした。
「ーー来るぞ!!」
嫌な感じ。
空間が裂け、妖魔王がサクラを伴い現れました。
『サクラ。彼女はお前に任せたよ』
『畏まりました。妖魔王様』
「ふん!かかってきやがれ桜野郎!!」
サクラが花弁を舞わせると同時に、樺地さんも氷を繰り出します。
一方、妖魔王と島塚君は静かに向かい合っていました。
『良く逃げなかったね』
「……逃げねえよ。俺はお前を倒す」
『やれるものならやってごらん!』
妖魔王が無数の黒い手を繰り出し、島塚君に向って襲い掛かります。島塚君は連続でパンチを繰り出し、黒い手と相殺していきます。
「おらあっ!」
『……!』
強い打撃に妖魔王が一歩後ろに下がります。その隙をついて島塚君の右の拳が妖魔王の顔面に当たりました。
『なかなかやるね。でもまだだ』
「っ!」
黒い手の先端が針のように尖り、島塚君の腕を貫ぬこうとします。島塚君は後ろに引いて攻撃をかわすと、青い炎を飛ばしました。妖魔王はそれを黒い手でガードしました。
「はあっ!」
島塚君は妖魔王に飛びかかり、連続パンチを繰り出しますが、今度は黒い手はびくともしません。
「くっ……なら!」
島塚君は青い炎を全身に纏わせます。そしてそれは鳳凰の形を作っていきます。サクラを倒した時と同じ技です。
「はあああっ!!」
鳳凰が飛び、妖魔王に一直線に向かいます。
激しい衝撃がぶつかり合います。しかしーー鳳凰は妖魔王を貫くこと無く、消えてしまいました。
そんな……。
「はあ……はあ……」
『この程度?君にはもう少し期待してたんだけどな』
「ぐっ……!」
「島塚君!!」
妖魔王が島塚君の頭を黒い手で鷲掴みます。島塚君は先程の技のダメージがあるのか抵抗出来ないようです。
「家久!!」
『貴様の相手は私だ』
「畜生!どけ!!」
樺地さんが助けに入ろうとしますが、サクラに阻まれて出来ません。
妖魔王は暫く考えるような素振りを見せた後、私の方を見て言いました。
『大切な人を殺せば、強くなるかな?』
「えっ……」
「や、やめろ……!」
次の瞬間。
黒い手が。
私の、胸を。
「美琴ぉぉおっ!!!」
意識を失う瞬間、そんな悲痛な島塚君の叫びが聞こえました……。




