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鬼と猫又と私  作者: 悠里
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第十話 妖怪のお医者さん

冬休みも終わり、島塚君と一緒に下校していると声をかけられました。


「久しぶりだな家久!」

「お久しぶりです」

「葉!」

「樺地さんに山田さん!お久しぶりです。傷はもう良いんですか?」


声をかけてきたのは樺地さんと山田さんでした。樺地さんは腕を組んでドヤ顔をしています。


「ふん!そんなものとっくに治っている。そして修行して強くなったぜ!これであの妖魔王とかいう餓鬼にも負けねえ!」

「へー。葉もか。心強いな」

「ふ、ふん!別にお前の為に強くなったわけじゃねえからな!」


樺地さんの顔が赤いです。ツンデレさんも大変ですね……。


「ところで家久……」

「ん?」

堂本(どうもと)が同行することになった」

「……マジ?」

「俺は嫌だって言ったんだが、母上にまた同じ目にあったらどうするんだって押し切られてな……」

「あー……」


二人のテンションが一気に下がりました。どうしてでしょう?私は山田さんに聞いてみることにしました。


「あの……山田さん。堂本さんって?」

「ああ、お医者様ですね。妖魔王に襲われた傷を治して下さったのが堂本様です。……鏑木様は、『どうもこうも』という妖怪をご存知ですか?」


私は首を横に振ります。知名度が低い妖怪ですからね、と山田さんは言って続けます。


「謎の妖怪とされていますが、元になった話では名医とされていたのですよ」

「だからお医者さんなんですね」

「そうです。彼もまた名医と呼ぶにふさわしいのですが……少々問題が……」


その時です。

何やら視線を感じました。

………………下?

私が下を見ると、仰向けに寝転がる、ボサボサ髪に無精髭、煙草を咥えた白衣の男性が……。

男性はぐっと親指を立て、言いました。


「純白!」

「……ひ……

ひいいいいい!!!」


ばっとスカートを押さえて後ろに引きます。

島塚君が男性の顔を蹴り飛ばします。


「堂本テメェ、美琴に何してやがる」

「いやー、とりあえず女の子のスカートは覗くためにあると思うわけですよ。おっさんは」

「ねえよこの犯罪者!」


………………え?

堂本?この人が?


「改めて、おっさんが堂本でーす。宜しくね美琴ちゃん」

「……は、はあ……宜しくお願いします」

「じゃあお近付きのしるしにちゅーでもっ!?」


堂本さんの顔にハイキックが決まります。ハイキックを決めたのはナース服を着たツインテールの小学生くらいの女の子でした。


「死ね変態」

「はあはあ……レイナちゃんもっとやって!」

「キモイ」


レイナと呼ばれた女の子はゴミを見るような目で堂本さんを睨んだ後、私の方に向き直りぺこりと頭を下げました。


「はじめまして。孝介(こうすけ)の保護者の四ノ(しのみや)レイナです。孝介がご迷惑をかけて申し訳ありません」

「は、はじめまして。鏑木美琴です。ご迷惑とかそんなことは……」

「はっきり言っていいんですよ。調子に乗るだけですから」

「は、はあ……」


孝介というのは堂本さんの名前でしょう。保護者と言っていることからレイナちゃんは神子なのでしょう。

島塚君と樺地さんがテンションが下がった理由が分かった気がしました。








私達六人は今、廃ビルにいます。

そこに現れた妖魔は、チェーンソーを持った人型が四体。


「んじゃ、二人共頑張ってー」


堂本さんはそう言うと、ごろりと寝転がりました。え?


「堂本さんは戦わないんですか!?」

「だっておっさん医者だもの。怪我したら治療はするけど」

「は、はあ……」

「ほっとけ鏑木。それよりも、俺の修行の成果みせてやるぜ!」


樺地さんはそういうと、氷を自分の身体に纏わせ防御し、更に氷柱を空間に発生させ妖魔に向って落とします。攻撃と防御を同時にこなせるようになったようです。


「どうだ!」

「やるな葉!俺も負けてらんねえ!」


篭手を装着した島塚君はその篭手に青い炎を纏わせます。そして妖魔のチェーンソーを片手でガードし、その腹にパンチを食らわせます。樺地さんの攻撃で弱っていた妖魔はみるみるうちに炎に包まれました。


「まずは一匹!」


島塚君は楽しそうに笑っています。今までそんなことなかったのに。……妖魔を倒すのが、楽しいんですか?


「っ鏑木様!」

「!」


妖魔が近付いていたことに気付きませんでした。チェーンソーが私に向って振り上げられます。


「美琴!」

「っ……!」

「おらあっ!」


島塚君がその妖魔を左手で殴り、倒しました。


「島塚、君……?」

「美琴……良かった……」


そう言って笑った島塚君の右腕から下が、無くなって、いました。

私を助ける為に……?


「し、島塚君。ごめんなさい。私……」


島塚君は左手でぽむぽむと私の頭を軽く叩きます。


「美琴が無事で、良かった」

「っ……」


私はなんて馬鹿なんでしょう。島塚君は島塚君なのに。こんなにも、優しいのに。

その間にも島塚君の傷口からは血が出ています。


「そ、そんなことよりも、傷……!」

「大丈夫大丈夫。そんな時の為におっさんがいるんだから。レイナちゃーん」


堂本さんはレイナちゃんを呼ぶと、その右手にメスで傷を付けます。自分の左手にも傷を付けると、手を握り血を交じらわせます。

すると、堂本さんの首が二つに分かれました。


「この姿あんまり好きじゃないんだよねー。女の子に引かれるから」

「いいからさっさと治療しろ」

「はーい」


堂本さんは島塚君の右腕を持ち、傷口にくっ付けます。両手の指がメスなどに変化し、治療をしていきます。最終的に元通りになりました。


「おっけーおっけー。治療完了」

「良かったです……」

「んー。美琴ちゃんに家久の代わりに助けたお礼貰っちゃおうかなー」

「え、何をですか?」

「そりゃ勿論ちゅー」

「死ねロリコン!」


島塚君の拳が、堂本さんの顔にめり込み堂本さんが吹っ飛んでいきました。




こうして、六人での初めての戦いは、終わりを告げたのでした。




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