タクヤ
はじめてです。
散らかった6畳のヒデオの部屋にタクヤはドスンと腰を下ろした。
「あーあ〜、高校生最後の夏だってのに勉強勉強、お勉強って」
高校3年生になるヒデオとタクヤにとってこの夏の長期休暇を受験勉強に当てる周りを見下すように暇という退屈を持て余していた。
「そーいえばさ、佐々木さん東京の方の大学いくらしいよ。3組の大崎が絶対女子アナになるっしょ!とか言って興奮してた。」
「チッ、なんで大崎がそんなこと知ってんだよあのストーカーヲタク野郎」
「でもさ〜いいの?」
「ん?なにが?」
「いや佐々木さん…好きなんだろ」
「んーまったく」
「どーかね」
正直、毎日の日常なんて取るに足らないものでありふれてた。毎週話題になるドラマも新作のファイナルファンタジーも巷をにぎやかしているアイドルたちのこともタクヤにとっては
「どーだって」
いいのだ。もちろん学園1番の美人、佐々木なぎさのことだって例外じゃない。みんな勘違いしている。隣で扇風機に当たっているヒデオも周りの顔が死んでる受験生たちも。この世の全部、いや少なくとも俺に見えてるまわりは全てゲームなんだ。いい大学いって大企業に就職して必死で生きるのもいいさ、飽きたら首吊って自らゲームオーバーを告げてもいい、ただ暇を潰すだけなんだよ。死ぬまでの時間を。だってそう思ってた方が楽じゃん…。
「じゃあたぶんまた明日なー」
「おーじゃーな」
夏休み、ヒデオんちでテキトーに過ごすことが定番になった。別に何が理由がある訳でもない。居心地が良い訳でも悪い訳でもない。今日は途中のコンビニで漫画でも読もうか、ホントどーでもいいことなんだけど。
団地の階段を下り自転車の鍵を外す、ふと違和感がある。
毎日更新します。(予定)