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第二話

せっかくだからと、深美・伊崎は世羅の家に招かれた。玄関に入ると伊崎は外装からはとても想像できないほど綺麗な家の中に驚いた。


「中は綺麗でしょう?」

これまた心を読まれたかのような気がした伊崎は曖昧な返事をしながら世羅についていく。世羅がドアを開けると、リビングのようなところに出た。椅子やテーブル、隅に置いてある棚はどれも綺麗に整頓されている。

「適当に座っててください。」

笑顔で案内する世羅の指示通り深美・伊崎は並んで椅子に座る。

すると世羅は先ほど入ってきたドアとは別の位置にあるドアを開け、誰かに声を掛けだした

「つっきーっ、お茶を淹れてください」


つっきー?突然出てきた名前に、伊崎は驚いた。

「ここには、もう一人すんでいるんですか?」

伊崎の質問に深美はああ、と短く答えた。頼み終わった世羅は深美の正面に座る。


「すみません。挨拶のつもりがお茶によばれてしまって。」


伊崎が謝ると、世羅は笑顔で、

「気にしないでください。それに、ふかみんが私に用があるみたいなので」

そう言い、世羅は深美を見る。

ああ、と深美は再び、短く返事をした。


それから間もなくして、先ほど世羅が声を掛けていたドアから少年が出てきた。暗めの茶髪に、鋭い目つきを見る限り不良かと思ってしまう容姿だったが、お盆にお茶の入った湯呑を3つを持っているあたりこの少年が”つっきー”なのだろう、と伊崎は一人で納得していた。


「……どうぞ」っと、湯呑をテーブルに置いていく彼は、かなり小柄だ。伊崎も平均より少し低いほうだが、彼はもっと低い。


「元気そうだな、いつき。」

深美が少年に話し掛ける。一礼して短く肯定の返事をするといつきとよばれた少年は伊崎を見る。


「あ、初めまして。伊崎亨です。深美先生の新しいパートナーです。」


「……樹っす」

伊崎の挨拶に、名前だけ名乗り軽くなったお盆をもってドアの向こうに行ってしまった。


「すみませんね。不愛想な子で」

世羅が謝ったが伊崎は気にしてませんから、と首を振った。

「つっきーは子鬼(こき)族なんです。」

その説明に伊崎は驚いた。


「子鬼ってあの体内に鬼を宿しているといわれる戦闘民族のですか?」


はい、と世羅は笑顔で答える

「と言っても、私の呪符魔法で鬼を押さえつけているので、子鬼としての能力は見られませんし、この家から出ることもできないんですよ」

そう言って世羅は壁を指さす。そこにはお札のような紙が貼りつけてあった。

「あの呪符魔法は和唱の類で、家のいたる所に貼ってあるんです」



魔法には大きく分けて2種類ある

1つは和唱と言って主にお札や式を使うもの。

発動までに時間がかかる上に魔力の消費も激しく扱えない者も多い。

だが威力に上限がないとされるほど強力な魔法が多くある。

2つ目は英唱。

主に魔法書の独唱がメインだ。

唱えればすぐに発動し魔力も安定的なので扱いやすい。

ただ中には和唱を超える魔法もあるとか。



「すごい…です。和唱魔法をそんなに広範囲に、しかも毎日連続的に使えるなんて」


感心する伊崎に、そうでもないですよ、と謙遜の言葉を返し続けるように訪ねた。

「そういえば。私のことふかみんに何て聞いていたんです?だいぶ緊張されていたので、気になっていました」


その質問に、伊崎は自分が出会い頭ほど緊張していないことに気づく。隣で黙ってお茶を飲んでいる先生をちらりとみて、思い出すように答えた。

「わ…若くして、天才と呼ばれる魔力を持ち、歴代最年少で魔術師の称号を獲得した………異端者…と、伺いました」

言いづらいためか言い終わるにつれ言葉が小さくなる伊崎をよそに世羅は伊崎に話しかける。


「ふかみんってばそんなに褒めてくれちゃって」

うれしそうな世羅とは対照的に深美は冷静に答える。


「褒めてない。過大にも過小にも説明していない」


「確かにそうですね。もう少しいい説明をしてくれればよかったのに」


笑う世羅に伊崎は少しとまどい、付け足した。

「でも、驚きました。噂とはちょっと違っていて。あ、勿論いい意味でです。人の噂とは、広がるたびに過大化されていくものですね」

納得する伊崎のよこで今度は深美が訪ねた。


「噂?」

深美の質問に一瞬世羅の表情が曇る。しかし伊崎はそれに気づかづ、話しを続ける。


「部署内でこっそり出回っている噂です。”若き天才魔術師は肉親を殺した悪魔”だと。でも噂は噂ですね。世羅さん優しそうだし。すみません失礼なことを言いました」


「…噂は噂…。たしかにそうかもしれないですね」

先ほど曇った表情が嘘のように笑顔で話す世羅を見て深美は心なしかほっとしていた。


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