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恋を手放したヒーラーは、静かに光を集める  作者: 塩塚和人


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12/12

第12章 一緒に働く未来


朝の光が、

通りを

静かに

照らしていた。


治癒工房ルーメン

扉を

開けると、

いつもの

香りが

広がる。


薬草と、

清潔な

布の

匂い。


ルーチェは、

深く

息を

吸った。


ここが、

自分の

居場所。


それは、

もう

揺るがない

事実だった。


「おはよう

ございます」


背後から、

落ち着いた

声が

聞こえる。


振り返る

必要は

なかった。


「おはよう

ございます、

ケリー」


自然に

名前が

出る。


それだけで、

心が

整う。


二人で

準備を

始める。


包帯の

確認。


器具の

配置。


役割分担は、

いつの間にか

決まっていた。


言葉は

少ない。


それでも、

噛み合う。


午前中は、

途切れなく

客が

訪れた。


軽い

怪我、

古傷、

疲労。


ルーチェは

治癒に

集中し、

ケリーは

周囲を

支える。


患者を

座らせ、

水を

渡し、

順番を

整える。


誰も、

声を

荒らげない。


空気が

穏やか

だった。


「……落ち着く

お店ですね」


客が、

そう

呟いた。


ルーチェは、

小さく

微笑む。


理由は、

わかっている。


自分

一人では

なかった。


支える

人が

いる。


それだけで、

世界は

少し

違って

見えた。


昼過ぎ。


珍しい

来客が

あった。


王城の

使者。


一瞬、

胸が

ざわつく。


過去が

脳裏を

よぎる。


ロバート。

王女リーン。


けれど、

立ち止まら

なかった。


「治癒の

依頼ですか」


淡々と

尋ねる。


使者は、

深く

頭を

下げた。


「王女殿下の

命では

ありません」


「町で

評判と

聞きまして」


胸の

ざわめきが

静まる。


過去は、

過去。


今は、

今。


依頼は

依頼として

受ける。


治癒を

終え、

使者が

去った

後。


「……強く

なりましたね」


ケリーが

静かに

言う。


「え?」


「昔なら、

動揺して

いた」


その言葉に、

少し

考える。


「……そう

かも

しれません」


否定

しなかった。


事実

だから。


夕方。


店を

閉める。


帳簿を

確認し、

灯りを

落とす。


外に

出ると、

空は

薄紫に

染まって

いた。


「今日も

無事に

終わりましたね」


「ええ」


並んで

歩く。


距離は、

自然。


近すぎず、

遠すぎず。


「……これからの

話を

しても

いいですか」


ケリーが

切り出す。


「はい」


「この町に、

しばらく

留まろうと

思います」


「護衛の

仕事は、

受けない」


理由は

聞かなかった。


聞かなくても

わかる。


「……そう

ですか」


それだけ

答える。


「店が

必要と

するなら」


「ずっと

手伝います」


選択肢を

押し付け

ない

言い方。


ルーチェは、

足を

止めた。


夕焼けが、

二人を

包む。


「……私は」


言葉を

選ぶ。


「誰かに

人生を

預ける

つもりは

ありません」


ケリーは、

頷く。


「知って

います」


「でも」


続ける。


「同じ

方向を

向いて

歩く

仲間なら」


一度、

息を

吸う。


「一緒に

未来を

作る

ことは

できると

思います」


ケリーの

目が、

わずかに

揺れた。


「……それは」


「約束

ですか」


「提案

です」


即答。


恋の

言葉では

ない。


けれど、

嘘も

ない。


「一緒に

働く

未来」


「支え合う

未来」


「それなら、

私も

否定

しません」


沈黙。


やがて、

ケリーは

深く

息を

吐いた。


「……それで

十分です」


「俺にとっては」


夜風が、

優しく

吹く。


遠くで、

町の

灯りが

瞬く。


治癒工房ルーメンは、

これからも

ここに

ある。


恋に

振り回され

ない。


自分の

足で

立つ。


その

選択の

先に、

誰かが

並ぶ

未来が

あっても

いい。


ルーチェは、

そう

思えた。


それは、

恋の

終わり

ではない。


自分の

人生を

選び続ける

物語の、

始まりだった。



--完--


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