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優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした  作者: ゆきのひ
4章 ランブイユ編

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71 王の夜会

 ついに夜会当日。


 私は着替えを済ますと、鏡の前に立った。

 ここに来てから毎日、この男装した姿でいたせいか、自分でもそれなりに様になってきた気がする。

 支度の仕上げとして、クラヴァットの結び目に、ブローチ代わりの髪飾りをぱちんと止めた。

 これは、お守りだ。


 すでに魔法陣が敷かれている地下広間へと続く、王城内の地下通路の確認も済ませている。

 こちらのほうがアルも言っていた通り、魔法師による警備ではなく、一般兵士たちによる物理的な警備のため、毛玉ちゃん――ではなく、ミニョンの魔法で突破は可能だ。

 あの黒髪の少女は、自分の名はミニョンだと言った。これからは、毛玉と呼ばずにミニョンと呼べと。その姿が毛玉の時も少女の時も。


「ロッテ嬢、本当に一人で大丈夫かい?」

「大丈夫。ルオンもいるし、ミニョンもね。ミニョン、強いんでしょ?」


 私は上着のポケットから顔を出した毛玉に尋ねた。

 アルの同じ魔法師としての見立てだと、ミニョンの魔力も魔法レベルも、自分に匹敵するか、あるいはそれ以上だそう。そこに高位精霊のルオンもいれば、アルと別行動となっても何ら不安はない。


「うん……まあね」


 ミニョンもそこは否定しない。


 私は姿を消したルオンを伴い、アルの友人として会場へと足を踏み入れた。

 ライブイユの王城内で一番格式が高いとされているソロモンホールは、魔法師と魔道具の恩恵にあずかる国にふさわしい輝きを放っている。ホールの至る所に設置された最先端の魔道具による装飾と演出の眩しさに、思わず目を細めた。


 だが、このホール内に、例の呪術紋入りの魔石の気配は感じられない。

 隣に立つアルも同じ思いだろう。


(ルオン、瘴気は感じられない? あの魔石みたいなものは?)


 心の声で呼びかける。


 ――ないみたいー。でも、別の場所から何かが流れてくる気配はするね。ごく薄っすら……っていうくらいだけど。


 緩やかに奏でられていた魔道具による音楽が、ぴたりと止まった。

 ホール内全員の視線が一斉に、開かれた入り口の扉に注がれる。


「国王陛下のご入場!」


 儀仗兵の声に、その場にいる人々は皆、揃って軽く頭を下げ、波が引くように左右に分かれて道を開けた。その道を、国王はホールの奥に設けられた高座へと向かい、進んでいく。

 私も皆に倣って、軽く頭を下げた。すると、隣のアルの前で、国王はその歩みを止める。


「素直に来たか。お前にしては良い心がけだ。今日はいいものを見せてやる」


 そう言うと、王はアルの肩をぽんと軽く叩いた。

 しかし、それに無言で返したアルの無礼を咎めることもなく、高座へと上がった王は夜会の開始を宣言する。

 その顔色は、遠目にもよろしくないのが見て取れた。ただ、その目だけが血走らんばかりの異様な鋭さを放っている。


「本日は、よくぞ集まってくれた。この魔道国であるランブイユの永遠なる繁栄のために、のちほど余が用意したものを皆に見せてくれよう。それまで歓談して楽しむことを許そう」


 王の言葉に、また音楽がホール内に鳴り響き、貴族たちは列をなして玉座に居ます王の元へと挨拶に向かう。だがそこに、本来ならいるはずの王妃の姿はない。


「王妃様はどうされたの?」

「ああ。母上には、今日は参加しないでくれと頼んでおいた。気分がすぐれないと病を装って、王妃宮の警備を固くして、夜会が終わるまで部屋に誰も入れないようにしてくれと言ってある」


 今夜は、何があるかわからない。アルが王のしようとしていることを阻止した場合、王が王妃を人質にアルを従わせようとするだろう。それを危惧して先手を打ったのだ。


 会場に王宮魔法師たちが揃ったら、それが私たちが別行動となる合図。例の地下の広間から主たる魔法師たちが消えたところに、私が侵入して魔法陣を破壊し、浄化する。そしてホールに残ったアルが、ヴァンホーテ侯爵の助けを借りて王の企みを潰すのだ。


 だが、ホールの来場者たちに目を凝らしていても、一向に王宮魔法師たちがやってくる気配はない。


「魔法師たちが揃ったら、僕の侍従が報せに来てくれる。慌てないで」


 アルは涼しい顔でそう言うけれど、逸る気持ちが抑えられない。


(何か、予定に狂いが出た?)


 それに――思っていた以上に、人々からの視線がこちらに向けられているようで、気になって仕方がない。

 私とアルを見ながら、こそこそと互いに耳打ちして話す令嬢たちや夫人たち。

 貴族の女性たちが噂好きなのはどの国でも同じだろうし、それが彼女らの仕事みたいなところもあるから、不思議はないんだけれど……。


 アルもそれに気づいたようで、私に耳打ちした。


「うーん……。なんとなくそんな予感もしていたんだけど……」

「ん? 何?」


 話を聞こうと、私がアルに身を寄せると、こちらを見ていた令嬢たちがなぜか一斉に口元を扇で覆い、頬を赤らめた。


「なんか僕たち、勘違いされているのかも……」


 意味がわからず、アルの目を見つめると、「きゃーっ!」と令嬢たちから小さく喚声が上がるのが聞こえた。


「え? どういうこと?」


 アルに聞き返そうとした時、アルの侍従が滑るように近づいてきた。

 すると、アルが少し表情を硬くして言う。


「時間だよ」


 その合図に、私はアルに静かに背を向けた。


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