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優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした  作者: ゆきのひ
4章 ランブイユ編

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68 着慣れぬ服で

 驚きのあまり、ポカンとしてしまった私を見て、侯爵がアルに言った。


「まだ、殿下のことをお話ししてなかったのですか?」

「うん……実はこれから言おうと思ってたところだったんだけどね。ロッテ嬢、なかなか言い出せなくて、ごめん……」


 何度も感じていた違和感に、答えが出た。


「私が知っても構わない話なら、聞かせてもらえませんか……?」


 そうしてアルは、今は自分がこの国の王太子であると話してくれた。


「ただし、今は、っていうだけの話だって僕は思っているから」


 アルの実母である現王妃様は、我が子である第二王子が行く行く政局の駒として扱われ、翻弄されることがないよう、先手を打って信頼できる侯爵家の養子としたこと、しかしその後、前王妃が陛下の怒りを買い、第一王子である王太子ともども追放されることとなり、アルが王室に戻され、王太子となったこと……。


「でも僕はね、兄上に戻ってきていただいて、王位を継いでほしいと思っている。だから、追放された王妃様がメロビングの知人を頼って出て行ったと聞いて、メロビングに兄上を探しに行っていたんだ」

「そんなことが……それで、お兄様の消息は知れたの?」

「いや……王妃様が身を寄せて、亡くなった時までいた場所に行ってみたんだけど、そこで人に聞いても、兄上の存在を知る者すら見つけられなかった。王妃様はそこに来た時、お一人だったと皆、口をそろえて言うんだ。どうやらランブイユを出てすぐに、兄上は王妃様と別れてしまったらしくて、まったく痕跡がつかめない……」


 アルは、メロビング王国内で兄と関係がありそうな人や場所をあちこち探して回った。その間、移動魔法を使って、定期的に王城内の自分の宮殿に戻ってきてはいたのだが、そんな中で幾度か、王城内で王宮魔法師と行動を共にしている魔法師たちの中にバレリーを見かけていたという。


「それだけじゃない。魔法陣も見たんだ。陛下がある時から魔法師以外の立ち入りを禁止した、地下の広間で」


 ◆◆◆


 夜会開催の三日前。

 私はアルと、王城から差し向けられた馬車に乗って、王城の王太子宮に向かった。


 他国の王城に足を踏み入れるということと、着慣れない服に感じる居心地悪さに、自然と私の体は強張ってしまう。そんな私の緊張を緩ませようと、時折アルが笑いかけてくれる。


「体の力を抜かないと。それじゃあ、一瞬でばれてしまうかもしれないよ。王太子宮の使用人たちは優秀だからね」


 やがて馬車は、ランブイユの王都の目抜き通りに差し掛かった。

 そこは一見、メロビングの王都のそれとさして変わらぬ賑やかさに感じるが、ふと、建物と建物の間の路地に目を凝らせば、その奥には所在なく地面に座り込む、汚れた服の人々。


「メロビングとは違うだろう?」


 馬車の窓から路地の奥に視線を向け続ける私に、アルが言った。


「そうね……正直、そう思ったわ」

「ランブイユは、地中に散乱している魔石のせいで、作物の育ちが悪い。王国民の食糧は、そのほとんどが他国から買い付けたもので賄われている。だから、食べるものの価格が他国に比べて高い。そのくせ、同じ地中の魔石のおかげで、魔力を持つ者が多く誕生し、魔法が発達している。だが、その魔法が多くの人々から仕事を奪い、貧困に落ちるしかない者たちを生み出すことにもなっている」


 ランブイユ王国は、巷にあふれる魔法によって他国にはない便利さを誇り、豊かな国に見せかけている。

 しかしその実態は、魔力を持つ者と、持たない者との間に明確な格差を生んでいた。魔力を持つ者はその恩恵にますます豊かになり、持たぬ者はさらなる貧しさに落ちるしかなくなった。


「かつては陛下も、魔力を持たない者にも魔法の恩恵を授け、貧富の格差を是正しようとしていた。そのための策を得るために魔法師たちを王城に集めて、何かを始めようとしていた。だけど、それからだと思う、陛下がおかしくなっていったのは……」

「何か、って?」

「それはおそらく、あの魔法陣に関係があると僕は思っている」


 ついに馬車は、王城の正門へと着いた。

 放っていた先触れからの報せで到着を知っていた使用人たちが、開かれた門扉の奥に左右に分かれて礼をとっている。


 駆け寄ってきた侍従らしき男性と騎士に出迎えられ、背筋を伸ばして馬車から降り立ったアルの姿は、まごうことなき一国の王太子だった。

 続いて私も馬車を降りると、侍従らしき彼がアルに尋ねる。


「殿下、ご一緒のお方は?」

「ああ、僕の友人だ」

「承知いたしました。では、殿下の近くにご友人様のお部屋をご用意いたします」


 何の不思議も疑いもなく、侍従は私に向かって丁寧に頭を下げる。それを見てアルが、私に目で悪戯っぽく無言の合図をした。


「くれぐれも失礼のないように頼む。……彼は隣国の貴族のご令息だ」


 そう――私はドレスではなく、貴族男性の礼装で馬車を降りたのだった。


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