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優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした  作者: ゆきのひ
3章 スイユ編

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60 つながっていく

 裏口から外に出たバレリーを追うため、アルの魔法で私たちは姿を消した。

 アルによると、この魔法は魔力消費が多いから、そんなに長くは使えない。しかも二人分だから、さらに時間は短くなるとのこと。


「ある程度距離をとらないと、彼も魔法師だからね、僕たちの気配に気づいてしまうから」


 アルによると、おそらくバレリーも上級魔法師だと。


 デシュアスを出たバレリーは、それほど離れていないところにある商会の建物に入っていった。


 だが、この商会の建物はすでに閉鎖され、今は誰もいないし、使われてもいないはず。先日、皇太子殿下の名の下に一斉に摘発された、魔物の違法取引に関与していた商会の一つとして解散命令を受けていたからだ。


 誰もいない建物の中を、窓から差し込む月明かりだけを頼りに、後をつけていく。


 やがてバレリーは、地下室へ続く階段に消えた。

 彼を追って、私たちも地下へと降りる。


 だが、たどり着いた地下室に彼の姿はなかった。

 そこに残されていたのは、地下室の床いっぱいに描かれた大きな魔法陣。それを一瞥して、アルが言った。


「転送の魔法陣だよ。ここを移動の拠点にしていたんだろうね」

「移動先がどこかはわかる? あの古城?」

「いや、この魔法陣は特定の場所にだけ移動するものじゃない。過去に一度行ったことのある場所なら、どこにでも移動できるものだ。それにもう何年もの間、繰り返し使われていた痕跡がある」

「ということは……この商会は、魔物だけじゃなくて、あの呪術紋入りの魔石とも関係があったということ?」

「そう考えるのが自然だろうね」


 だとしたら、王太子からの呪術紋入りの魔石についての依頼は、先立って摘発した魔物の違法取引とのつながりを確信してのことだろう。

 実は遥かに大規模な悪事の企みを最初から掴んでいて、真の目的は、それを明らかにして裁くこと。


 確かに、王太子が直々に乗り出しているほどだから、王室を揺るがすほどの――つまり、メロビング王国を揺るがすほどの企みが隠されているのだろう。それは同時に、ルオンへの濡れ衣に関わることでもある。

 すべての罪が、つながっている。


 難しい顔をして考え込んでいたアルが、ぽつりと言った。


「ロッテ嬢、グランセに戻ったら、話しておきたいことがあるんだ」



 グランセに戻った私たちは、ベレニスに見てきたことを報告する。

 あの魔法師がバレリーと呼ばれていたことしか知らないというアルに代わり、私がその名を告げた。


「バレリー・カミユ。モントロー公爵家の傍系、カミユ子爵家の三男よ」


 なぜそこまで詳しく知っているのか、あえて触れないでいてくれるベレニスが有難い。

 もしかしたらすでに、すべてを察しているかもしれないが。


 そして、閉鎖された商会の地下にあった魔法陣のこと、そこから彼が移動を繰り返しているようだとも話していたら、アルが唐突に口を開いた。


「ロッテ嬢に、話しておきたいことがあるって言ったよね。僕は……あの男の行き先に心当たりがあるんだ」


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