表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

プロローグ

 『青春の1ページ』と言われてみんなは一番最初に何を思い出すのだろうか。

 クラス全員で繋いだバトンリレーで優勝を勝ち取った体育祭?

 劇や喫茶店、屋台、バンド、最後は後夜祭でキャンプファイヤーを囲んだ文化祭?

 好きなグループに分かれて、その町の歴史や文化に触れて学び、夜はルームメイトとトランプや恋バナに花を咲かせた修学旅行?

 全国大会目指して、朝練に、授業後は夜遅くまで残ってひたすら汗を流した部活動?

 同じ大学に行くために、塾や予備校に通って、朝から晩まで打ち込んだ勉強?

 学校ではみんなで馬鹿して、帰りはコンビニに寄って買い食いしたり、ゲーセンやカラオケで遊んで、夏は花火大会で一夏の甘い恋を経験、そんな日常?

 どれも素敵な青春じゃないか。

 青春に答えなんてない。その若くて初々しい時期の想い出に楽しい、とか、悲しい、とか、嬉しい、とかそういう感情が乗ってるから、君の想い出というアルバムの中に『青春の1ページ』として記録されるのだ。

 でも俺は、その『青春の1ページ』がない。謙遜とか恥ずかしいから言えない、のではなく本当にない。

 そしてその青春を羨ましいとも思わない。強がりとか負け惜しみ、というわけでもない。

 俺には感情がないんだ。

 だから中学も高校も『想い出』はない。ただ、記憶はある。それが『想い出』ましてや『青春の1ページ』へと昇華するわけではなく、ただデータとして自分の脳に刻まれているだけ。

 たまに考えることはある。これは問題なのか?と。

 正直、生きていく上で感情なんて不要で、逆に感情が人生を歪ませることもある。人間関係なんてその最たるものだ。感情の応酬でしかない。それで相手も傷付けば、自分も傷つく。最悪なパターンはそれが犯罪につながるということ。

 仕事だって、ただ言われたことをやって、つまりは会社の歯車になれば問題ないわけで、そこに報酬が発生するとなれば、文句のつけようもない。まさにWin-Winな関係。感情に揺さぶられて、仕事の効率が落ちるようなら、それこそ問題になるわけで、組織にとっても面倒事でしかない。

 どうだろうか。これが、俺が感情がない=問題ではない、という方程式の答えなのだが、異論はあるだろうか?って誰もその答えを求めていないのだから、結局は自己満足で完結させている。

 これからもこの答えはきっと変わらないだろう。だから俺にとって青春なんて不要で無関係なものなのだ。

 春から大学生、青春を一通り終えた男女が集う場所。俺も今日からその一員になるわけだが、やはり彼らとは一線を引くのだろう。

 自分から線を引けば、その線を超えてくる者は誰もいない。これは俺の経験則。

 仮にその線を超えてきた人がいたとしよう。

 君ならどうする?

 俺なら無視だ。

 では、突然平手打ちをされたらどうする?

 え、平手打ち?話したこともない初対面の人間に平手打ちなんてするか?

 俺の目の前には烈火の如くその瞳を燃やす、苛烈な女が立っていた。

 これが俺の大学生活の始まりだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ