戦争でもさせるつもり?
昨日は色々なことが起こり過ぎて良く眠れなかった。
寝不足で頭が重い。
海斗にとって不運だったのは、今日は朝から数学の小テストがあることだ。
ただでさえ学校の成績が悪いのに、今回のテストで赤点でも取ろうものなら留年もあり得る。
本来なら昨日は学校から帰ったら一夜漬けで勉強する予定だったのだが、あの事故のせいで何もかも狂ってしまった。
とはいえ学校側がこちらの事情を考慮してくれるとも思えない。サイバーマトリックス社との契約があるのでそもそも話せないのだが。
今からでも最低限の予習をする他ない。
適当に朝食を済ませ、海斗は何の柄も描かれていない真っ白な服に袖を通して家を出た。
一見、無地に見えるこの服は、複数の電子回路が組み込まれた導電性高分子ナノファイバーで製作されており、着用者の体格に合わせてサイズが変化する。
さらに立体映像技術を応用した表地は、インターネットで気に入ったデザインの服をダウンロードして、表面に表示する仕組みになっていて、これにより、一つの服で様々な衣装を入れ替えることが可能となり、一々着替える必要もなくなる。
海斗はいつも通り、赤のフード付きパーカーに瞬時に切り替えて、学校へと向かうバスに乗り込む。
車内ではテストに出そうな問題をひたすらネットで検索していた。
この勉強がどこまで役立つかはわからないが、何もしないよりはマシだと自分に言い聞かせる。
十分ほどバスに揺られていると、ピラミッドを彷彿させる四角錐の形状をした学校の校舎が見えてくる。
シタデル・サイエンス高等学校。
世界に通用する未来の人材を育成する為の教育機関で、海外からも多くの留学生が集まる。
ただ徹底した実力主義を奨励していて、落ちこぼれに対する風当たりは世界中のどこよりも強い。どちらかというと落ちこぼれ側に属する海斗は、この学校では底辺の地位にいる。
入口のセキュリティゲートを通過すると、一階から四階まで吹き抜けのエントランスホールに入った。
内部の壁面や支柱には多数のデジタルアートが展示されていて、中央部にある巨大なプラズマボールがこの学校のシンボルとなっている。
すれ違う生徒達は、LEDを縫い込んだ服を着たり、ホログラムのアクセサリを装着したりと、派手な衣装に身を包んでお洒落を楽しんでいる。
高校生ともなれば、一層ファッションに気を遣う年頃である。
加えて海斗の通う学校には指定の制服がない。それは即ち当人のファッションセンスがそのまま校内カーストの順位に直結することを意味する。流行遅れの服など着ていては、たちまち底辺に転落してしまう。
一方の海斗はと言えば、お世辞にも最先端とは言い難い、数年前のデザインを未だに使い続けている。
本人がその服装を気に入っているのと、そもそも流行のファッションとやらが、本当にお洒落とは思えないのが主な理由だ。他の生徒も本気で格好良いと思って着ている者は、極少数派なのではないだろうか。単に流行っているから自分も同じ物にしなければ、という単純な思考回路で行動しているだけだと思う。
海斗はそのようなことに金を使う気にはなれなかった。
だが他の生徒が自分磨きに余念がない中で、そんなことをすれば孤立するのは自明のこと。結果的に彼を底辺に押しやる原因にもなっている。
数人の男子生徒が通路のド真ん中で談笑していた。その合間を、海斗は肩身の狭い思いですり抜けた。明らかに邪魔をしているのは向こう側だが、文句は言わない。落ちこぼれに人権などないのだ。
「よう、オタク君。勉強出来ねえクセに何しに学校来たんだ?」
すれ違った男子生徒に声をかけられた。
彼は同じクラスの生徒で、名前は赤城という。空手部に所属していて、いつも底辺の海斗を揶揄っている。周りにはその取り巻きもいる。
相手にしても仕方ないので無視して歩き続ける。
「ひひひ……見たかよアイツの情けない顔」
「ホントホント。ああいう奴ってさ、生きてて楽しいのかな?」
「なあ、早く行こうぜ。あんな奴が近くにいるとこっちまで陰キャが感染っちまう」
散々言いたい放題言った後、男子生徒達は背を向けてその場を後にした。
人混みの中を四、五人が横に並んで歩いていると他の通行人に迷惑になる。
案の定、数歩も歩かない内に、通りすがりの女子生徒と肩がぶつかってしまう。
「きゃっ!? ちょっとぉ!」
ぶつかった勢いで、女子が手に持っていた鞄を取り落とし、中身が床に散乱する。が、彼らは悪びれる素振りすら見せずに、「そっちがぶつかって来たんだろ」と捨て台詞を残して立ち去って行った。
仕方ない。海斗は引き返して、拾うのを手伝うことにした。
「大丈夫、夏川さん?」
「あ、海斗じゃーん。オハヨー!」
海斗が手伝おうと思ったのは、彼女がクラスメイトだったからだ。
夏川葵。
いかにも今時のギャルといった活発な容姿で、誰にでも分け隔てなく接し、海斗にも気軽に話しかけてくれる数少ない人物である。白を基調にしたレザーの衣服に、左右で丈が異なるソックスを着用し、赤と橙色のツートンカラーの髪を、LEDアクセサリが付いたヘアゴムでツインテールにしている。
「サンキュー、マジ助かったよー」
「どういたしまして」
「にしてもマジむかつく、何なのアイツら……」
「気にしない方が良いよ。ああいう連中は相手にするだけ時間の無駄」
「まーそれもそだねー」
落とした物を鞄に戻し終えると、二人して教室へと足を運ぶ。
「はー朝っぱらからテストとかまじだるー……海斗はちゃんと勉強してきた?」
「ま、まあそれなりに」
実際は全くしていないのだが、精一杯強がって見せた。
「本当に? テストの点数悪かったら留年するかもしれないんでしょ。アンタがいなくなったら私寂しいよー」
「……ハハハ」
――寂しい? それは一体どういう意味だろう。ただ友達として寂しいという意味なのか、あるいはもっと他に深い意味があるのか。
こういった女子の何気ない一言でも、深読みしてしまうのが男の悲しい習性と言える。
「ねえ葵ー、いつまでそいつと喋ってるワケ?」
教室付近まで来ると、一人の女子が不機嫌そうに近づいて来た。
「あ、恵。今日は早いね」
「いい相手にすんのやめなよ。そいつと一緒にいるとアンタまでダサい奴認定されるよ」
「そんな言い方ないでしょ、恵は海斗のこと嫌いなの?」
「別にそういう訳じゃないけどさあ、アタシこういうウジウジした奴、苦手なんだよねえ」
「もーそんなこと言ってえ、どーせ私が海斗と仲が良いから嫉妬してるだけなんでしょ? 別に一番の親友は恵なんだし気にすることないじゃん。ちょっとくらい海斗に浮気したって。ねえ、海斗?」
「は、はあ……」
葵が腕を肩に回して擦り寄って来るので、海斗は何とも気まずい気持ちになる。
葵の一番の親友である卯城惠は、その様子を面白くなさそうに睨みつけている。快活な葵とは対象的にクールで男勝りな印象を受ける顔立ち。アニメ風のピクセルアートが描かれたスカジャンを着込み、毛先の部分だけ赤く染めたストロベリーブロンドのセミロングヘアをセンター分けにしている。
一番の親友なだけに、自分を差し置いて葵と仲良くする海斗に一方的な対抗心を燃やしていた。
海斗自身はそんなつもりはないのだが、それでも彼女からすれば親友を奪おうとする泥棒猫のように見えるのだろう。
海斗は恵に気を遣い、少し距離を置いて教室に入った。
「恵はちゃんとテスト勉強して来た?」
「当然じゃん? 点が悪かったらどんなペナルティがあるかわかったもんじゃないし、しない奴はよっぽど頭が良いかただの馬鹿よ」
海斗には耳が痛い話だ。
この学校では素行や成績の悪い生徒へのペナルティが、他校より厳格な傾向にあり、テストの成績など学業に関する理由で退学を言い渡される生徒が毎年必ず一人は存在する。
海斗などはまさに、退学者予備軍と言っても差し支えないだろう。
「じゃね海斗、お互い頑張ろーね!」
葵に笑顔で手を振り返しながらも、海斗は内心不安に駆られていた。
「フン、浮かれていられるのも今のうちだ」
席に座ろうとしたのと、そんな不快な声が背後から発せられたのは、ほぼ同時だった。
声のした方を振り向くと、長身瘦躯の男が薄笑いを浮かべてこちらを睥睨していた。
数学の担任教諭の高橋だ。
「通常なら赤点以上で留年は回避出来るが……浅宮、お前の場合は七十点以上をとらなければ即留年決定だ」
「え、何でそんな……?」
「これまでのお前の成績を考えれば当然だろう。むしろ今まで大目に見てやったことに感謝しろ」
高橋はそう言うと、クラス全員に聞こえるように声を張り上げて高らかに宣言した。
「それだけじゃないぞ。今回のテストでもしクラスの平均点が七十以下なら今後一年間、学校への私物の持ち込みを一切禁止する。アクセサリーや化粧品も例外ではない。服は体育のジャージを着て貰う。お前達は勉強だけに専念するんだ」
生徒達から一斉に「えぇー!?」という不満の声が湧き上がる。
「異論は一切認めない。底辺には遊ぶ権利など与えられということだ。まあせいぜい頑張るんだな」
そう吐き捨てるように言い終えると、高橋は立体映像を解除して煙のように姿を消した。
教壇に内蔵された光学装置で遠隔から会話していたのだ。本来ならリモート授業などに使用されるものだが、彼は嫌味を言う為だけに使ったようだ。
「わざわざアレを言いに来たのかよ」
「よっぽど暇なんでしょ」
教室内から次々と恨み節が聞こえてくる。
しかし生徒がいくら抗議しても、学年主任である高橋の決定を覆すことは難しいだろう。
「はあー、最悪……」
にわかにクラス内に不穏な空気が漂い始めた。
「俺、今回のテストは余裕だと思って全然予習してないんだよなぁ」
「あたしもー。平均点よりちょっと下くらいなら何点でも良いや、って思ってたからずっと遊んでた」
「オイ田中、頼むから今日だけは真面目にやってくれよ」
「何で俺に言うんだよ。俺なんかよりもっと平均下げそうな奴がいるだろ」
その時、クラスの生徒達の視線が一斉に海斗に集中した。
「何でああいう馬鹿のせいで俺達まで巻き込まれなきゃなんないのかねえ?」
「ホント、ああいう不真面目な奴が一人いるだけでこっちまで迷惑するんだよな……」
「仕方ない。少しでも良い点を取れるよう一人一人が努力するしかないよ」
海斗はどうしようもない無力感に襲われる。
いつもは勉強出来ない奴は放っておけと言っているクラスメイト達が、こういう時だけ協調性を重んじるのは少々滑稽な話だ。
色々言いたいことはあるが、しかし今はそれどころではない。現状、海斗が七十点以上をとれる確率はゼロに等しい。ただでさえ赤点ラインをうろうろしているのだから、奇跡など起こりようがない。
今すぐにでも予習を始めるべきなのだが、留年したらどうなるのか、という思いが邪魔して手がつけられなかった。
そうこうしている内に、テスト開始の時刻が迫って来る。
もはやここまで来ればどうとでもなれだ。海斗はそんなヤケクソな気持ちでテストに挑んだ。
回答は全て手元のホロキーボードとタッチパネルで行う。
テスト中は拡張現実によって周囲の音と視界を遮断し、完全なカンニング防止策を取っている。
ほどなくしてテスト終了のチャイムが鳴る。
終わった、と海斗は思った。
正直、全く手応えを感じなかった。というより、回答している間は自分でも何が正解か不正解なのかさえわからなかった。とりあえず直観で回答しているような、そんな感じだった。
採点は人工知能《AI》によって数分で行われ、前方のスマートボードに順位表形式で結果が表示される。採点される間、生徒達は神妙な面持ちで身構えていた。
海斗は見るのが怖くて思わず目を背けた。
関係ないが海斗はこのテスト結果を全生徒に公表する学校側の方針が嫌いである。生徒間の競争を高める目的があるそうだが、成績の悪い人間にとっては公開処刑に等しい。
その時、どっと驚きの声が沸き起こった。
「えぇ噓……何でアイツが……」
「何かのバグじゃね?」
「いやいや、いくら何でも一位はあり得ないだろ。すぐに訂正が入るはず」
どうやら意外な人物が一位をとったらしい。といっても自分には関係ないことだが。と思いきや、どういうわけかクラスの全員が海斗の方を凝視しているではないか。
不思議に思ってスマートボードの一番上に表示された名前を見た瞬間――我が目を疑った。
一位 浅宮海斗 100点。
いや見間違いだろう。きっと他人の名前が自分の名前のように見えただけだ。そう思いながら目を凝らしてもう一度見直してみる。が、やはりそこには浅宮海斗とはっきり表示されていた。
先ほど誰かが言ったように、採点システムの不具合ではないのか。だがいつまで経っても訂正が入ることはなかった。
しばらくすると教室の扉が勢い良く開いて、血相を変えた高橋がつかつかとこちらに歩み寄って来た。
今度は立体映像ではなく本物だ。
「おい貴様……何をしたんだ?」
「は?」
「とぼけるな、イカサマをしたのはわかっている! どんなイカサマをしたか訊いているんだ!?」
どうやらカンニングを疑っているようだ。
まあ万年最下位の生徒が突然満点をとったのだ。疑問に思うのは当然だろう。
「まあ落ち着いてくださいよ高橋先生」
後から現れたクラス担任の中嶋が高橋を宥める。
「これが落ち着いていられますか! 目の前にカンニングをした生徒がいるのだぞ!」
「けど証拠がないでしょ。この教室には完璧なカンニング対策が施されているし、AIの判定もカンニングをしていないって出ているじゃないスか」
「そんなものがアテになるか! カンニングでもしない限り、こんなクズが百点をとることなどあり得ないんだ!」
何だか一大事になってきた。
その後、緊急の職員会議が開かれ、海斗がカンニングしたかどうかで激しい議論が行われた。
会議では主に高橋が舌鋒鋭くしてカンニングを主張したが、最終的には証拠がないので疑わしきは罰せず、という結論に至った。
あまりにも好奇の目に晒されるので、教室を抜け出して男子トイレに駆け込んだ。
クラスメイト達も当然、海斗のカンニングを疑った。しかしおかげで平均点は辛うじて七十点以上。海斗が百点をとらなければペナルティを課されていた可能性が高いので、声高にカンニングを非難する者は現れなかった。
むしろ「バレずに良くやったな」と感心する者までいたほど。
正直、海斗自身にも何が何だかわからなかった。
やはり何度考えても不自然だ。まぐれにしても満点はさすがにおかしい。
まるで別の誰かが自分の身体を操作して、勝手に回答を入力したかのような――
そう考えた瞬間、海斗はつい最近にも似たような体験をしたことを思い出す。昨日の暴走族とで出会った時のこと。あの時も、自分の意志とは関係なく身体が動いて男達を殴り倒していた。
サイバーマトリックス社に機械の身体にされてから、不可解なことばかり続いている。
一体、彼らは自分の身体に何をしたのだろうか。
『何かお困りでしょうか?』
「ワァ!?」
などと考えていると、耳元で突然女性の声がした。男子トイレであるにもかかわらず、だ。
それは昨夜、サイバーマトリックスの本社ビルで出会ったバイオロイドの少女だった。
「な、何でここに?」
『新しいお身体で何か戸惑うようなことがあればサポートをしたいと思いまして、ご連絡致しました』
「連絡?」
良く見ると彼女の姿は実体ではなかった。拡張現実を利用したチャットアプリで話しかけているのだ。
「ま、まあいいや。それより勉強してないのにいきなり優等生になったんだけど、これってどういうこと?」
『恐らくニューラル・インターフェースの計算ソフトが作動したのだと思われます。テストの答えを自動的に算出して海斗様の身体を動かし、解答したのです』
ニューラル・インターフェースは大昔のスマートフォンと同じ役割を果たす、脳内に直接インプラントするナノマシン型の情報端末である。
機能も多種多様で、複雑な数式を扱える計算ソフトもプリインストールされている。
「つまりわかりやすく例えると電卓を使ってテストに解答したってこと?」
『その通りです』
「……それってカンニングじゃないの?」
『教師の方も、まだ習っていない問題を出して意図的に海斗様を留年に追い込もうとしていたのでお互い様でしょう』
「それ本当? まあ確かにあのオッサンならやりかねないけど……」
しかし何故彼女はそんなことまで知っているのだろうか。
「でもこれがバレたら俺、退学になっちゃうんじゃないの?」
『ご心配なく。浅宮様のニューラル・インターフェースは学校のカンニング防止システムでも見破られない仕組みになっていますので』
「そういえばAIもカンニングしていないって判定になったって言ってたな」
『AIがカンニングを見抜けなかったのは“フレーム問題”のせいです』
“フレーム問題”とは人工知能が抱える問題の一つだ。簡潔に説明すると、人工知能は現実に起こり得る全ての問題を処理することは出来ない、ということである。
自動運転車で例えるならば、飛び出してくる車や人には対処出来るが、地震で道路が陥没するといったような、不測の事態には対処出来ないということだ。
まさか昨日まで落ちこぼれだった生徒が、高性能なサイボーグに生まれ変わったとは誰も思うまい。
だからカンニングを見抜けなかったのだ。
しかし種明かししてみると、ただ単に不正をしていただけということがわかって、拍子抜けした気分になる。同時にこれが明るみに出たらどうしよう、という不安にも駆られる。
『それに仮にカンニングが明るみになったとしても問題はないでしょう。サイバーマトリックスはこの学校に多額の寄付を行っているので寄付金の停止か減額をチラつかせて学校側に圧力をかければ、海斗様の退学は簡単に取り消せるはずです』
確かにこの学校の運用資金の大半はサイバーマトリックスの寄附で賄われている。ある意味サイバーマトリックスの子会社と言っても過言ではない。その企業がバックについてくれるなら自分は安泰なのか。
何だかズルをしているような気がしないでもないが、とはいえ彼女の言うことが正しければ、高橋も不正を行っているそうなので、それほど気に病む必要はないかもしれない。
「じゃあ、暴走族を殴り倒したのも同じ原理?」
『はい、海斗様のサイバーウェアに内蔵されている動体センサが、海斗様に近づく物体の脅威レベルを測定して危害を加えようとしていると判定すれば適切な対応を取り、場合によっては反撃するようにプログラムされています』
「何だか誰かに操られているみたいで落ち着かないなあ……」
『お望みでしたら設定をオフにすることも出来ますが』
「そう、鉄パイプで殴られても全然痛くなかったけど?」
『先日クルーガー氏が言ったように、海斗様の身体は特殊な素材で造られているのです。皮膚は極めて頑丈かつ柔軟性のあるナノマテリアルで構成されており、戦車砲にも耐え得る耐久力を有しています』
「戦争でもさせるつもり?」
何だかますますロボットじみてきた。
しかしトラックで殺されかけた身としては、これは決して悪いことではないのかもしれない。おかげで簡単には死なない身体になったのだから。
それとこれは余談だが、後々になって高橋が意図的に難解な問題を出していたことが判明し、今回の小テストは無効となった。
プリスが正しかったことが証明されたわけだ。