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16万回目の選択肢  作者: 夢実
1章 選択の神
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2024年1月6日 ー選択ー

 暗い部屋で、鎮座している自分は、他の人から見たらいじめられている子だろう。


「ねえ、翔くん朝からうるさいのよ。近所の人にも迷惑です!」


 正面には茶色い肩までの長さの髪の毛で目がくりっとした、女性がいる。

 こんな寒いのに、もこもこしたショートパンツ、お気に入りのジェラなんとかのパジャマとのこと。


「すみません」


 そう、僕の妻の怜である。


「まず、土曜の朝なんだから寝かせてよね、それと、コーヒー私にも入れて」

「はい!ただいま!少々お待ちを!」

「うっさい!」


 わかってはいるのだが、結婚して5年でもうラブラブから空気に変わってきている出会いは、大学の頃。

 とても可愛い人だと思ったのを今でも覚えている。

 同じサークルの高嶺の花の彼女と仲良くなるのに時間は掛からなかった。

 カメラ好きという共通の話題があった。

 一緒に写真を撮りに行こうという、あたかも無害ですという雰囲気を醸し出しつつ、下心満載で彼女を何度もデートに誘い5回目のデートで告白し結ばれた。

 22歳でつきあって、27歳で結婚。結婚生活も3年目という8年目の仲睦まじい夫婦である。


「まーだー?」

 回想シーンに思いをふけている場合ではない。

「もう少しお待ちくださいませ」

「できました。本日のコーヒー コロンビアでございます。」

「あらいい匂い」


 こんな会話ができているので機嫌は治ったのだろう。

 何も彼女との関係は良いが、刺激というものはおおよそ感じてはいない。


「それで、どうしたの?」

 大きな音を出してればそう思うだろう。

「いや、なんか臨時収入?みたいなものが入って、驚いてコーヒーを足にこぼして、叫んで今に至ります。」

 稚拙な回答になっていた。嘘をつくのが上手くない。


「そうなの、それは良かったじゃん?まぁまず足大丈夫?」

「いたい……です。」

「まず冷やそっか」

「はい。」

「はい、ソファに行って、足こっち向けて」


 ソファの上で膝の上に真っ赤の足を置いてタオルで巻いた保冷剤を当ててもらう。

 情けない……。

 奥さんは髪を耳にかけながら「いたそっ、大丈夫」と言って心配してくれている。

 これはしばらく靴履けないな、今月曜日は家で仕事することに決めた。


「それで、いくらぐらい入ったの?」

「うーん、20万ぐらい」

「おー!今日はお寿司だ!」

「そうしよう!いたっ、」

「あっ大丈夫、?」


 嘘をついたが、お寿司、お寿司といって朝から踊っている彼女を見つつ、さっそく準備を始めていた。


「まだ開店してないと思うよ?」

「いいの!お寿司なら今日はおしゃれしていくよー」


 金額の嘘をついた罪悪感と可愛いなという気持ちが芽生えて、神のことを忘れていた。


「そっか、足痛いからそこまで遠くは行けないけどいい?」

「それならあそこ行こうよ!駅前の老舗みたいなところ!」


 あの高そうなところか、まぁランチならいいか。

「そうしようか!」

「わぁ――い!よく並んでるから気になってたんだよねー!早く準備しなきゃ」


 いやまだ8時で開店が11時とかだから3時間ほどあると思うが……。

「何時に行くつもり?」

「9時半には家出れるよー」

 家から徒歩10分で着くのにもう行くのかと、思いながら痛い足を引きずり、準備を始める。

 ー彼女の選択ー


 変な女と思われただろうか。

 言わないのは嫌だし、悩んだけど。

 私は、既婚者である彼の事を好きになってしまった。


 これを一目惚れと言わずしてなんと呼ぶのであろう。

 土曜日の朝になんて大胆な連絡をしたのだろうか。

 言ってしまった……。


 誰もいない部屋で1人布団の中で悶えている姿は、さながらミノムシである。


「う――――」

 呻き声と共に、布団の中のもふもふとぶつかる。


「あっごめんねみーさん、おはよう。」

「にゃー」


 猫のみーさんも布団で丸くなっていた。

「ご飯食べよっか」


 返信のない携帯を横に朝食の支度をする。

「やばい女だと思われてるかな、既読はしてるけど」


 返信のない携帯から流れるのは、私の好きな曲朝には必ず聞いている。

 多分気にも止めてないし、あの人は何が何だかわかってないと思う。

 鈍感にぶちんだし、そもそも私の事を好きでもないだろうし。

 でも、あの優しさに私は惚れてしまった。

 負けるとわかっていても言わずにはいれなかった。


「みーさん、ついに言ったよ」

 答えてくれるわけでもないが、目の前のご飯に夢中な彼女が少し笑っているように見えた。


『わかってはいるんだ……』

 そう私はこの恋を結末をしっている。


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