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「………なんで、なにが、起きたっていうの……」


蹂躙され、炎に呑まれた縄張りの中で、竜はただ呆然とした。そのまま空を見上げると、遠くへと羽撃く白い龍の姿が見えた。





「よぉ、アルカディア!」


「うわぁ、びっくりしたなぁ」


「ふっ、後ろがガラ空きだぜ!」


「驚かさないでくれよ兄さん」


「俺だから良かったものの、相手が変質者だったらどうするんだよ?」


「男を狙うとかホモかよ」


「いや、もしかしたら女かもしれない」


「僕は男にも女にも負けるほど弱くない」


「はは、ちげぇねぇや!」


「………ん?」


「お、どうした?」


「いや、あそこの子……」


少し遠い場所に、黒い竜が居た。キョロキョロと辺りを見渡している。


「良い女じゃないか、ナンパしてこいよ!」


「なんでだよ!」


「俺もう女居るもん」


「そんなのどうでもいいんだよ。あの種族タイプ、見たことないね」


「あれは……ニーズヘッグ……か?」


「困ってるみたいだ。ちょっと行ってくる」


アルカディアは黒竜のもとへ。しばらく会話をすると、黒竜は礼をして空を飛んでいった。


「何だった?」


「道に迷ってたみたい」


「はは。にしても、かっこかわいかったな。俺らの蒼色とは違って、紅色の眼が黒体に映えてたぜ。ところでレッドアイズとブルーアイズどっちがかっこいいと思う?」


「漢字表記にしたらレッドアイズの方が好きだけど」


「お前身体ホワイトなのに?」


「別に良いじゃん」


「お前にお似合いの女だと思うぜ。もし今度また会ったらアプローチしろよ」


「なんでそんなことしなきゃならないんだよ」


「おいおい、これでも俺はお前に彼女ができないことに焦りを感じているんだぜ? それとも、あの竜はお前に響かなかったのか?」


「いや……可愛いとは思ったけどさ。まぁ、考えておくよ」



―――――――――――――――――――



「……おい、おーい?」


「え、なに?」


「いや、さっきから適当に返事されたらそりゃあな? 昨日のあの女が気になるのか?」


「……気にならない、と言えば嘘になるけど。可愛かったし、でも今日会えるとは限らないし」


「……お、噂をすればご本人だぞ?」


「は!?」


確かに目の前に居たのはこの前の子、僕らに気づくと大きく翼を動かした。


「うわっ!?」


ドン、と兄さんが背中を押す。僕は彼女に少し近づいた。


「俺急用思い出したわ。んじゃまたなー」


「おいっ!! ……ったく」


「……あの」


「ん」


黒竜が僕に近づく。


「昨日はありがとう」


「今日も迷子?」


「いや、ここに居ればまた会えるかなって」


「そっか」


「僕の名前はドラヘル、君は?」


「僕はアルカディア、よろしく」


「あの、昨日のお礼がしたくて。でも、何すれば良いのかわかなくて……」


「僕は構わないんだけど……それじゃあ、少しお話しする?」


「うん」


「君みたいな種族のドラゴンは僕は見たことないんだ。どこか遠くからやってきたの?」


「えっと……スカンジナビアから……」


「ふーん、僕の知らないところだ」


「アルカディアは?」


「ん、僕のところは……王国だったな」


「へー、すごい!」


「……もし、何か困ったことがあればここにおいで。僕がここにきて助けてあげるから」


「うん!」


「………!」


可愛い笑顔だった。僕には到底できない、純粋無垢な笑顔。


「どうしたの?」


「いや、なんでもないよ」



「おっ。アルカディアじゃないかー」



「え、叡智さん!?」


「なんでそんなに驚くのかね」


「ああ、いやごめん。ドラヘル! ちょっと用事ができちゃった! また明日ここで集合ね!」


「わかった!」




「おいおい、何さ彼女から逃げるように」


「……実際逃げたんだろうね」


「何があったの」


「……昨日知り合ったばかりなのに、彼女を見るとすごく心臓がドキドキするんだ」


「なるほど。一目惚れってやつか、アルカディアも恋するんだね」


「恋?」


「falling love」


「なっ!?」


「あはは、エルドラド喜ぶと思うよ。ようやく弟にも彼女ができたって」


「まだ付き合ってもないよ!」


「そうかっかしなさんなって。私とエルドラドでなんとか結んであげるからさ!」


「ほ、ほんと?」


「勿論! それじゃあ早速会議といこう!」


僕は叡智さんに引っ張られて色々相談をしたのだった。


ドラヘル、かっこよくて可愛い子。もっと仲良くなって、あわよくば……彼女になってくれたなら……




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