#04
佐渡市相川地区
江戸時代に金山で賑わい、佐渡奉行所も置かれていた。有名な観光名所「佐渡金山」があるのがまさに相川地区である。そのほか京町通りや北沢浮遊選鉱場、大間港といった金山と関係が深い名所の他に、切り立った岸壁が印象的な尖閣湾なども有する。地形的には佐渡島の北西側に位置し、海岸線と大佐渡山地に挟まれる格好で縦に長く広がっているエリアである。
ガシマセンキでは現実世界のエリアに合わせて領土が配置されているのでアイ・カワ領もサド・アイランドの北西側の海岸線に沿って縦に長く広がるエリアになっている。
そしてキョウ・マチストリートは、アイ・カワ領の中心地であり、高台にある坂の街だ。
……
リンゴはレクチエの手を引きながらキョウ・マチストリートを駆け上がっていった。
「リンゴさん、もっとゆっくり走って頂けませんか」
「だって急がないとみんながログインしてくるじゃない。待たせたら悪いから急ぐっちゃ」
「急がされている私に対しては悪いと思わないんですかね……」
二人は坂の頂上近くにある拘置所の前を通り過ぎ、佐渡金山のシンボル的な景色である道遊の割戸が見える場所にたどり着いた。
「ほらほら、レクチエ。道遊の割戸が見えるよー!本物とそっくり!!」
「もう。本物はしょっちゅうご覧になってるじゃないですか……あら?」
二人が知っている佐渡金山は閉山して久しいが、目の前に見える道遊の割戸の周りにはたくさんの鉱山夫たちがせわしなく働いていた。
「この世界の金山は今も何か採掘できているんですね」
落ち着いた口調ではあるが、レクチエもいつになく少し興奮気味だった。
「ピエール、早くその者達を捕まえて!」
「はっ。姫様」
おもむろに切迫した話し声が聞こえてきたので、リンゴとレクチエは振り返った。するとそこには高貴な雰囲気の少女といかにも騎士然とした男が走って行く姿が見えた。
好奇心丸出しでリンゴが言った。
「ん??誰か走っていくよ!」
レクチエが頷きながら答える。
「あら。すごく急いでおられましたね……どうしたのかしら?」
リンゴがレクチエに質問した。
「ねぇ、なんかさ、面白そうなクエストの雰囲気じゃない?」
「えぇ。普通のクエストと違ってそうな感じですね。面白そうに感じるのはなんだかわかりますわ」
「あの2人の後を今すぐついて言った方が良いかな?」
レクチエは少し首をかしげる。
「全員が一緒にいるのなら、間違いなく追いかけるんですけどねぇ」
「そしたらわたし、追いかけてみるっちゃ」
リンゴはすぐに二人の後ろを追いかけ始めた。
「あ。リンゴさん。ちょっとだけ待って。パーティーに入ってくれたほうが後で追いかける時に……」
レクチエの言葉はリンゴに届いていなさそうだった。それなので慌ててリンゴをパーティーに誘った。
「リンゴさんがパーティーメンバーに入りました」
ナビゲーションの声を聞いてレクチエはホッとした。
「坂の下でみんなと合流しないといけませんね」
レクチエは今来た道を下り始めた。