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#14

 翌日の朝、5人はゴールド・マインを経由してキタ・ザワ・ルインに向かった。

 キタ・ザワ・ルインの地下2階ではウィルオーウィスプの大軍に遭遇したが、肩慣らし程度に敵を倒し、そしてセルゲイに渡された地図を確認し、地下1階の指示された小部屋に宝箱の蓋を開けた状態で床の上に置いた。ロランが何の気なしに

「たったこれだけで500万KBも貰えるのか」

 と言った途端、フロリスが烈火のごとく強い口調で怒り始めた。

「私たちはそれで終わるわけにはいかないと何度言ったら理解するのですか!」

 そこには普段の温和なフロリスは見る影も無い。ロランは肩をすくめ、改めて地図を確認した。隠し部屋がある場所へは今来た廊下を戻らなければならないようだ。5人は地下2階から上がってきて一番近くにあった部屋へ入った。さすがに過去数百年間冒険者が探索し尽くしているので、部屋の中の棚という棚には何一つ残っていなかった。

 フロリスはアルノーに指示をして棚を1つ破壊させた。しかし、そこには古びた石壁が魔法の灯りをぼんやりと灯しているだけだった。

 ギィが壁に耳を当ていくつかのブロックを叩き始めた。他のメンバーには音の違いが判別できなかったが、1つのブロックを叩いた後、そのブロックの周りを針金のようなものでこすり始め、そしてブロックを引き抜いた。そのブロックがあった場所を覗き込むと魔方陣のような柄が描かれていた。

 フロリスはセルゲイから預かった地図を見ながら呪文を唱え、光を指先から飛ばし、魔方陣に当てた。すると壁の一部が消え始めたのだ。どうやら強力な結界に他の壁と全く同じ柄を投影して、いわゆる擬態のような状態を作り出していたらしい。


「はは、ははははは……本当だ。隠し部屋だ」

 そう言いながら部屋に入ろうとしたフロリスの腕をギィが掴んだ。

「待て」

 新たに開いた扉一つ分の通路を注意深く探索する。そして、ギィはわずか3m進むだけで1時間もの時間をかけたが、そのお陰で3つの罠を無効化できた。

 そして、5人はついに隠し部屋に足を踏み入れることができた。部屋の壁側には幾つかの棚が並んでおり、様々な薬品と器材が並んでいた。そして部屋の中央の壁近くに豪華な椅子と机が置かれており、椅子の上には王冠を頭に載せ、ローブを纏ったミイラが座っていた。

 フロリスが興奮を隠しきれない様子で叫んだ。

「ほら、見て下さいよ。あの王冠。あの王冠に施されている意匠は間違いなくキタ・ザワ家の紋章ですよ。私たちはついに数百年の謎を解くことができたんですよ!あれはベルナール・ド・キタ・ザワ公爵、その人ですよ!」

 他のメンバーもそれを確信し、興奮もしていた。だが、興奮し過ぎの感があるフロリスの姿をみてしまうと、自分は冷静でいようとする自制心が働いた。今回の依頼は宝箱を置いてくればそれで完了。あとはそこに道具や薬品を詰めれば、報奨金は変わらないが追加の依頼もクリアだ。セルゲイに恩義があるわけではないが、ロランは棚の中から幾つか見繕い、先ほど設置してきた宝箱に入れに行った。金が貰える範囲の事以外は絶対にしない冷たいヤツらだ、後々そう言われたりするのも癪だったので、そうしただけであった。

 その間にギィは棚の中を漁り、金目の物をかき集めていた。しかし、金になりそうな物は思っていたほど無かった。一応、錬金術の道具は色々な種類があったが、それを持って帰ったとて、売り先に困った挙げ句二束三文で買いたたかれるのがオチのような物ばかりだった。


 そして、ロランが戻ってきたのでパーティー全員で街に戻ろうとした時のことだった。

 フロリスがキタ・ザワ公爵の前から動かなくなってしまった。

「おい、フロリス」

 ロランが声をかけると、フロリスが目だけを動かした。そして

「まだですよ。まだ、まだやり残していることがあるでしょう……」

 と言ったが、目の焦点が定まっていない。ロランはアルノーに目で合図を送った。それを見たアルノーがフロリスを担ぎ上げようとしたが、微塵も動かすことができなかった。

「こいつはダメだ。なんでこんなに重てえんだ??」

「それはやり残していることがあるからですよ」

 そう言いながらフロリスがソフィーの方を向く。

「ソフィー、ここに哀れな最期を遂げた領主がいます。この方に安息の祈りを捧げるのがあなたの役割ではありませんか?」

 言葉は丁寧だが、断る余地の無いキツい言い方だった。

「フロリスの言うとおりですね」

 ソフィーがキタ・ザワ公爵の前に歩み寄り、目を閉じながら手をかざした。

 その瞬間、フロリスがソフィーを突き飛ばした。

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