第20話
「・・・ふう、ここならもう安全ですね。」
俺はほっと胸を撫で下ろしながらエルザに話しかけた。ようやく安全な場所まで戻って来れた。ずっと緊張していたせいか、よく分からない疲れが今になってどっと押し寄せてくるように感じた。
「もう話しても大丈夫なのでしょうか?」
「ええ、ここなら普通に話してもらって大丈夫ですよ。」
心配そうなエルザに対し俺は優しく答えた。
「はあ~、もういつモンスターに襲われるんじゃないかってずっとビクビクしていたんです。本当に怖かったですよ・・・」
緊張が解けたのかエルザはその場にへたり込んでしまった。
無理もないか。俺だって怖かったのだ。ましてや全く戦うことの出来ないエルザにとってあの行軍は針のむしろを歩くようなものだったのだろう。
「それでタケル様?何かを見つけたようでしたけど・・・?」
「ああ、そうなんです。実はさっき草むらの先に・・・」
俺はエルザに見つけたモンスターについて話し始めた。
・・・
「・・・なるほど、それはポイズンエイプで間違いないですね。私が知る情報とタケル様が見たモンスターの姿が一致していますから。」
「そっか、良かった・・・と言って良いのか分からないですけど、とりあえずは目標までたどり着けましたね。」
ポイズンエイプを見つけることができたが本番はこれからだ。今から俺があのモンスターたちを倒さなければならないのだが、一つ懸念があった。
「実はポイズンエイプの中に一際でかい奴がいたんですけど、あれって同じ種と考えて良いんですかね?」
俺は気になったことをエルザに聞いてみた。どうもあの強大なポイズンエイプが不気味で仕方なかったからだ。
「私も専門では無いので確実なことは言えないのですが、それは”特殊個体”と言われるものかもしれません。」
「特殊個体?」
聞きなれない単語に俺は思わず聞き返した。
「ええ、モンスターは基本的に姿、形、そして能力は均一とされていますが、中には突然変異か何かによってそれらが大きく異なるものがいるらしいです。そう言った個体は特殊個体と分類されるようになったみたいですよ。」
「へえ、そうなんですか。今まで何体もモンスターを倒してきましたけど、そんな話聞いたことなかったな。」
「最近王国の学会で発表されたものらしくて、まだ世間には浸透していないみたいですね。私もモンスターの研究を専門とする友人から聞いて初めて知ったくらいですから。」
なるほどモンスターも個体によって違いがあるのか。そうなると俺が見たあの巨大なポイズンエイプは特殊個体である可能性が高く、戦闘の難易度も格段に変わってくるはずだ。
「あのポイズンエイプが特殊個体であれば、その強さは未知数ということになりますね。通常個体のものと同時に戦うのは危険過ぎるな。」
俺は独り言のつもりで呟いたが、それを聞いたエルザは手を口に当て何かを考え始めた。
「エルザさん?」
「・・・何とかなるかもしれません。タケル様、私に一つ考えがあります。」




