第7話
「えっ?異世界って何?」
オウルの説明に俺は半ば混乱しながら聞き返した。
「ここではない世界です。そこでは魔法も普通に使われていますよ。ええ。」
そんな世界があるの!?というかどうやってそんなところに行くんだ?
「…主様であれば、あなたの一人や二人、異世界に転移することなど朝飯前です。」
疑問が顔に出ていたのか、オウルは俺が質問する前に誇らしげに答えてくれた。
「まあ確かに人を生き返らせたりする人だし、それぐらいできそうだけど、それで魔王っていうのは?」
「魔王は魔王です。魔族やモンスターを従えた王です。」
「いや魔王がどんな存在かは想像できますけど、なんで俺が勇者になって魔王を倒しに行かないといけないんですか。」
「...さきほど伝えた通り、あなたは奴隷です。奴隷は主様の命令は絶対なのです。ええ。」
何の説明にもなって無い気がするが、オウルは主の命令には逆らうなということを言いたいのだろう。しかし、魔王というのがどれくらいの強さか分からないが、例え俺が格闘技のチャンピオンだとしても勝てないような気がする。
「しかし、あなたが不安になるのも分かります。安心なさい、別に一人で魔王に挑むという訳ではありません。現地には協力者もいますし、戦いに慣れるための訓練期間もあります。」
俺の不安そうな顔を察してか、オウルが励ますように言った。
「さて、以上で面接は終わりますが、何か質問はありますか。」
「いや、色々とツッコミどころ満載過ぎて何から質問していいかって感じですけど・・・」
「それなら特に質問は無いということで、これで面接を終わりにします。」
明らかに不満な俺の言葉に対して、オウルはそれを遮るように言った。
「さて先に伝えました通り、この面接には合否などありません。あなたが主様の奴隷である以上、異世界に行って魔王を倒すことは必然なのですから。」
オウルは羽を使ってコホンというジェスチャーを取りつつ、話を続けた。
「この面接であなたの人となりや特性が分かりました。それを今から主様に伝えに行ってきます。少し時間が必要ですので、それまで、ここで飲み物を飲みながら待っていてください。」
オウルは言い終えるとすぐに飛び立ち、店の奥へと消えていった。
オウルの姿が見えなくなると、俺はガクっと脱力し、テーブルに突っ伏してしまった。面接が終わってホッとしたからというよりは、これから異世界に飛ばされ、魔王とかいう訳が分からない存在と戦わないといけないという現実が重くのしかかってきたせいだ。
「俺がどうしてこんな目に・・・」
テーブルで突っ伏しながら、ふと横を見ると、まだ一口も飲んでいないコーヒーが目に入った。面接ですっかり飲むことを忘れていたが、せっかくなので頂戴することにした。
「・・・うまい!」
オウルが用意したコーヒーは意外な事に今まで飲んだコーヒーの中で一番美味しかった。