表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界と魔女  作者: 氷魚
第一部 異世界と勇者 第三章
62/246

第12話

「・・・ああ、何だかのどかで落ち着きますね。」


「・・・そうですね。この景色を見ていると癒されて、日頃の疲れが取れていくような気がします。」


俺とエルザは馬車の窓から見える田園風景を眺めながら、のんびりと寛いでいた。


俺たちは今、王都メーテナから東にあるハサリ村という場所に馬車で向かっているところだ。


ポイズンエイプの住処はハサリ村の近くにある森であり、まずはその村に行って情報を収集するというのがエルザの計画であった。


とは言っても、村までは馬車で半日近くかかるため、俺たちは現地に到着するまで、馬車の中で待つしかなかった。


幸いにも俺たち以外の客は乗っておらず、周りを気にせずに寛ぐことができた。


・・・


「しかし、ハサリ村の近くにポイズンエイプの住処があるってよく知っていましたね?」


俺は研究一筋だと思っていたエルザの思わぬモンスターの知識に、驚きと疑問からなぜその情報を知っていたのか聞いてみることにした。


「いいえ、私も今まで全く知らなかったのですが、実はその・・・昨日研究室を飛び出した後、「そもそもポイズンエイプはどこにいるんだろ?」ってことが気になって、冒険者ギルドに行ってみたんです。そしたら冒険者の方がポイズンエイプについて色々と教えてくれて・・・。」


エルザは少し気まずそうに答えた。


・・・あの流れで、そのまま冒険者ギルドに行ったのか。この切り替えの良さがエルザの良いところなのかもしれないが、正直呆れてしまう思いもあった。


「あんな喧嘩をした後なのに・・・さすがエルザさんですね。」


「喧嘩なんてしてません!あれは、その・・・議論ですよ、議論!」


エルザは顔を少し赤らめながら言った。昨日ことはエルザでもやっぱり無かったことにしたいのだろうか。どこかその表情は恥ずかしさを隠そうとしているようにも見えた。


俺は話をしながら改めてエルザを見た。いつものエルザは黒いパンツに白衣を着た働く女性という感じだが、今日はロングワンピースにゆったりとしたジャケットを羽織って、さらに暖かそうな帽子も被っていた。まるでちょっとした山にハイキングにでも行くかのような姿だった。


俺は遠足気分のエルザに不安を覚えつつも、いつもと雰囲気の違うエルザを見て、何だか急に緊張してくるような喉が乾くような変な感覚を覚えた。


どうしてしまったんだろうか。この世界にきて初めて冒険するようなものだから、楽しみで気持ちが高ぶっているのだろうか。


「そろそろハサリ村に着くみたいですね。・・・タケル様?ぼーっとしてますけど大丈夫ですか?」


エルザは俺に近づき、顔を覗き込むようにして言った。


「・・・!大丈夫です、何でもありません!ちょっと寝不足なだけですから!」


俺は慌てて顔を背け、誤魔化すように再び馬車の外を見た。


ハサリ村が見えてきた。その村は、俺の想像していた通り、何もなさそうな小さな村のように見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ