第6話
「では始めにあなたの下の名前と年齢を教えてください。ああ、名字は言わなくて結構ですので。」
オウルは真剣な表情で俺に問いかけた。何だか妙に緊張する。将来経験するであろうアルバイトや就職活動の面接はこのような感じなのだろうか。
「はい、名前はタケルです。年齢は14歳です。」
「ふむ、結構。では今までの人生における戦闘経験について教えてください。」
・・・今なんて言った?聞き間違いでなければ、戦闘経験があるかどうか聞かれたのだが、これはなんて答えるのが正解なんだ?
「いや、戦闘経験はないです。」
俺は正直に答えた。
「え?今までの人生で一度も?全くないのですか。」
いやいや、普通の中学生が戦闘経験なんてあるわけないだろ!と内心で俺はムッとした。それとも俺が知らないだけで周りの同級生たちは日々ストリートファイトでもしているのだろうか。
「あなたのいう戦闘経験というのが俺の想像しているものと一緒なら無いですね。ただ子どもの頃から中学まで剣道をやっています。なので武道の試合という意味でなら、戦闘経験もありますが。」
「ほお!素晴らしい!ではその武道の技術で人を殺した経験は?」
「ある訳ないだろ!捕まるじゃないですか!」
俺は面接だということを忘れて、思わず素でツッコミを入れてしまった。一体このフクロウは何を言っているんだ。
「なるほど、武道のたしなみはあるようですが、対人戦闘は未経験ということですか・・・まあ14歳の子どもならそんなものでしょう。ええ。」
オウルは何かを納得したような顔で頷きながら言った。少しその言い方に俺はカチンときたが面接だということを思い出し、冷静であろうと努めた。
「では魔法はどのようなものを、どのくらいのレベルで使うことができますかな。」
「いや、魔法なんて使えるわけないだろう!」
オウルの質問にまた俺は素に戻ってしまった。というよりだんだんどうでも良くなってきた。
「対人戦闘も未経験、魔法も使うことができないと・・・ふむ、思った以上の素人ですな。しかし、その辺りの事はこれから幾らでも経験を積んでいけますから何とかなるでしょう。」
俺はもはや怒りを通り越し、呆れながらオウルの言うことを聞き流していた。・・・ん?待て、経験するとは一体?
「ちょっと待ってください。経験するって何をですか。まさか俺自身がこれから魔法を使ったり、誰かと殺し合いをするってことじゃないですよね?」
「その通りです。ええ。察しが良くて助かります。」
「良くないです。犯罪じゃないですか。何でもするとは言いましたが流石に人殺しはできない。」
「んー、何か勘違いしているようですが、あなたは主様の奴隷なのですよ。主様が誰かを殺せとご命令されれば、あなたはそれをすぐに実行しなければならないのです。」
「そんなあ・・・」
俺はそれ以上言葉が出なかった。奴隷になって苦しい思いをする覚悟でここにはきたが、まさか誰かの命を奪うことまでやらされることになるとは。
「あー、あなたはこの世界のルールを気にしておられるのですね。それなら安心なさい。魔法を使うにしろ、戦闘を行うにしろ、この世界でのことではありませんから。」
絶望している俺にオウルは言った。しかし、その言葉をすぐに理解することはできなかった。
「えっと、この世界のことではないというのは・・・?」
「あなたは、勇者として異世界に行くのです!そこで魔王を討伐してもらいます!ええ!」




