第7話
「・・・あんた、本当に大丈夫?」
「ああ、見た目ほど悪くはないから、気にせず始めてくれ。」
エルザと出会ってから一週間が経った。今日はセレナと魔法訓練の日で、朝から魔法の指導を受ける予定だ。
俺がエルザの毒の研究に協力することになって以来、エルザはあらゆる毒を俺に投与した。その作用として、吐き気や頭痛、体の痺れにめまいなど、様々な症状が俺を襲った。
しかし、それらも早ければ数十分、遅くても半日程度で回復した。俺は自分自身の体ながら、最近ではその異常な体質を不気味に感じるようになっていた。
そうは言っても、連日の毒摂取は体に堪えるものがあった。エルザは俺の状態を見て毒を投与しているから大丈夫!と言っていたが、正直突然ぽっくりと逝ってしまうんじゃないかって内心不安だった。
今日も訓練前に何かの毒を投与されたばかりだ。エルザは毒を投与された俺が日常生活でどのような支障をきたすのかも見たいとのことで、訓練だろうがお構いなく毒を投与してきた。
ということなので・・・
「で、あの女は何?」
セレナは俺たちから離れたところのベンチに座っている女性を不審そうに見ながら言った。
その女性はエルザだった。エルザはニコニコしながらこちらを見ていた。
エルザは研究の一環として、俺の行く場所にはどこにでもついて来た。俺の経過を常に観察していたいとのことだったが、ずっと見張られている感じがして、正直げんなりしていた。
「あの人のことは気にしなくていいよ。ある研究に協力していて、ここに居てもらってる。ヴィクターの許可も取ってあるから。」
一応俺がセレナから魔法の指導を受けていることは秘密となっているため、エルザにはセレナの魔法訓練を仕事として手伝っていると伝えていた。
「はあ・・・別に良いんだけど、あんまり無理しない方がいいんじゃない?あんたはどんなことでも自分がやらなきゃって気を張りすぎなのよね。」
「・・・」
「できないことがあったって良いんじゃないの?そのために私やヴィクター様もいるわけだし、無理して体を壊してちゃ何の意味もないと思うんだけど。」
セレナの言い方は少しぶっきらぼうだが、心配しているのは伝わってきた。
「だから、本当に辛くなったら私に言いなさい。分かった?」
「・・・おう。」
セレナの言い方は心配な弟にでも言い聞かせているみたいだった。子ども扱いされて少し複雑だが、俺にも姉がいたらきっとこんな感じなのだろうと思った。
「ありがとな、セレナ。」
俺は素直にセレナに感謝を伝えた。
「・・・!急にらしくないこと言わないでよ!気持ち悪いわね!」
セレナはそう言うとすぐに顔をそむけてしまった。しかし、表情は見えないが耳が真っ赤になっているのが俺には見えた。
「それじゃあ、そろそろ訓練を始めようかしら。悪いけど、あんたの体調がどうであれ、魔法に関して妥協はしないから。今日は止めとくなら今のうちよ!」
「こっちこそ、遠慮なんかいらない!早速始めようぜ!」
俺が返事すると同時にセレナは魔法を放った。本日の魔法訓練が始まった。
しかし、調子の良いことを言った俺だったが、セレナの滅茶苦茶な魔法訓練は、体調不良の俺にとって、いつもの何倍も堪えるものであった。




