第4話
俺が家に帰るとルカは確かにいた。何事もなかったかのようにテレビを見ながら、俺が取っておいたプリンを食べていたのだ。
「おい!」
「わっ!びっくりした。何かよう?ていうかびしょ濡れじゃない。」
「俺の事はいい!それよりルカっ」
「あっ、このプリンのこと?それは兄さんが悪いんだからね!冷蔵庫に入れておくものは名前を書いておくって決まりにしたのに守らないんだから。これは早い者勝ちだから。」
「いやそうじゃなくて、ルカは何も覚えてないのか?」
「覚えてないって何を?」
「この1,2時間のことだよ!ほら口げんかになって、ルカはそのまま家を飛び出したろ?」
「はあっ?何言っての?私は部活から帰った後、そのままソファーで寝ちゃって、ついさっき目が覚めたんだけど。兄さん大丈夫?」
ルカはどこか不審そうに俺を見ながら言った。ウソをついている様子はない。もしかすると記憶も書き換えられているのかもしれない。
人を生き返らせ、家までワープさせることができたんだ。あの仮面の女性なら記憶の一つや二つ書き換えるくらい造作もないのだろう。
俺はこの不可思議な現象に無理やり納得し、ルカとの会話も早々に切り上げ、シャワーを浴びるために浴室に向かった。
シャワーを浴びながら思考をすると色々と冷静に物事が考えられてきた。
確かに一度ルカは死んだし、そして生き返った。それをあの女性は何らかの手段で行ったのだ。そうなってくると俺に刻まれた奴隷紋も本物と考えてよいだろう。逆らったら何が起こるか分からない。最悪の場合、ルカがまた死んでしまう可能性だってある。
「しょうがない、覚悟を決めるか!」
俺はこれから起きることを考えると不安はあったが、指定された場所で仮面の女性に会うことを決意しながら、温かいシャワーの感覚を味わった。