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異世界と魔女  作者: 氷魚
第一部 異世界と勇者 第一章
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第17話

「訓練に戻れ!」


兵士たちはエドマンドの合図と同時にすぐに訓練に戻っていった。無駄のない統制の取れた動きだ。やはり日々過酷な訓練を行っているのだろうか。規律も厳しそうに見えるし、俺はこのような環境でうまくやっていけるのか少し不安になった。


「タケルといったかな?」


エドマンドはヴィクターと話していた時と変わらない表情で俺に尋ねた。王子の前だから表情が硬いのかと思ったが、俺だけの時でも変わらない。人によって態度を変えない人と分かっただけでも少し安心できた。


「はい、タケルです。改めてこれからよろしくお願いします。」


「うむ、では早速訓練に入ろう。タケル、今まで剣を扱ったことはあるのか?」


「はい、でも真剣は扱ったことないです。竹刀なら毎日振ってましたけど。」


「ん?竹刀とはなんだ?」


エドマンドは聞きなれない言葉に少し表情を変えた。しまった、この世界にまさか竹刀がないなんて思いもしなかった。俺は今更ごまかすこともできないので、竹刀について簡単に説明した。竹という植物から作られた訓練用の剣だということを伝えたが、「竹」というものにエドマンドはピンときていないようだった。


俺は最終的にエゼムの子どもたちはみんなそれで訓練していると適当な嘘をついたが、エドマンドは「なるほど、やはり世界には様々な剣があるのだな。」と納得してくれたようだ。ヴィクターが言った通り、とりあえずエゼムのせいにしておけば、何でもごまかせそうであった。


「ならば全くの素人ということではないようだな。まずは剣にどれくらい慣れているか見てみよう。この剣を振ってみてくれ。」


俺はエドマンドから剣を受け取った。剣は中世ヨーロッパの時代にありそうな真剣だったが、剣先がつぶしてあるので、訓練用の剣であることがわかった。さすがに竹刀より重いが振れないこともない。俺は剣道の素振りのように剣を振った。


「・・・」


エドマンドは特に何も言わない。俺は黙って剣を振り続けることにした。


・・・


「よし、そこまで!」


素振りの回数が10回にもなろうかというときにエドマンドが俺の素振りを止めた。相変わらず表情に変化がないので、俺の素振りが良かったかどうか分からない。あまりにも素振りの質がひどすぎたので突然怒り出すんじゃないかと不安になった。俺は恐る恐るエドマンドの顔を見ながら審判の時を待った。


「なかなか見事な素振りだった。さすがヴィクター殿下に見込まれて従者になっただけのことはある。」


エドマンドは表情こそ変えないが、声に嬉しさが含まれていることが何となくわかった。意外な評価に俺は驚いた。


「才能も確かに感じるが、それ以上に素振りの基礎がしっかりしているな。商業都市の子どもたちは皆、そのように剣を振るうことができるのか?だとしたら、その・・・竹刀?という模造刀はとんでもない代物だな。」


「あ、いえ、多分エゼムじゃ剣の鍛錬をしている子どもなんて少なかったので、みんなができるわけじゃないと思います。」


俺のせいでエゼムの子どもたちがとんでもない剣豪集団になりそうだったので、適当にごまかした。実際、商業都市というくらいだから剣術なんてやっている人は少数派だろうし、あながち間違ってもいないと思う。


その後も俺は素振りをエドマンドに見てもらいながら、細かい部分の指導を受けた。エドマンドはその見た目から、感情論でただ怒るだけの指導をしてくると思ったが、俺の悪いクセやその直し方を理論的に説明してくれたので、とても分かりやすかった。そのため、いつのまにか俺はエドマンドに対する緊張も無くなり、訓練に没頭することができた。


「よし、最初より大分よくなったな。飲み込みも早いから、上達も早い。・・・そうだな、本当はしばらくしてからと考えていたが、今日のうちに模擬戦もやってみるか!そうと決まれば、おい、トミー!」


エドマンドは俺の返答を待つことなく、トミーと呼ばれる兵士に声をかけた。表情こそ変わらないがエドマンドは少し興奮しているように見えた。


「お呼びでしょうか、兵士長。」


トミーと呼ばれた男はすぐにやってきた。茶色い癖毛の髪に肌が白い少年だった。年は俺とそう変わらないように見える。てっきり、ここにいるのは2、30代の大人ばかりだと思っていたから同世代がいたことは少し意外だった。


「タケルと模擬戦をやってくれ。タケルは初心者だが手加減などは不要だ。必ず全力をだせ。」


「はあ、兵士長がそうおっしゃるなら、俺は構いませんけど・・・」


トミーは少し不安そうに俺の顔を見ながら言った。話が勝手に進んでいるが、模擬戦とはいったい何をやるのだろうか。


「タケル、模擬戦のルールを説明しておく。」


エドマンドは俺に模擬戦について説明してくれた。


・・・


模擬戦について簡単にまとめると、お互いに模造刀を持って戦うのだが、当然ながら寸止めらしい。いくら剣先が潰してあるといっても当たれば大ケガだ。安全に配慮されている点については安心できたが、俺自身も相手にぶつけないように注意しないといけない。また審判を務めるエドマンドが勝敗について決めるらしい。


俺は訓練初日だし、兵団の兵士にいきなり勝てるとは思えない。ケガにだけは注意しようと心に決めた。


エドマンドから説明を受けた後、早速模擬戦を始めることになった。模擬戦を行う場所には地面に線が引かれている。丁度長方形のような形になるように引かれており、ここから出たら負けというルールもあるそうだ。


俺とトミーは線の中に入り、向かい合って剣を構えた。エドマンドの合図を待つ。剣道の試合の時でもそうだが、この始まりの合図までの間が何よりも恐ろしく、同時にワクワクする瞬間だった。


「それでは始め!」


エドマンドの合図により模擬戦が始まった。

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