第16話
午後になり、ヴィクターは俺を連れて兵団の訓練場に向かった。訓練場は学校のグランドくらいの大きさがあり、そこで兵たちがそれぞれ訓練していた。俺は初めて中学の部活見学をした時のことを思い出し、何だか緊張してきてしまった。
「ここが兵団の訓練場さ。最近は大きな軍事演習もないから、各自基本的な鍛錬を行っているみたいだね。おっと、どうやらこっちに気づいてくれたみたいだ。」
ヴィクターと話していると、兵団は途中で訓練を止め、こちらに向かって走ってやってきた。ヴィクターの前まで来ると整列し、右手を心臓にあてるポーズをした。忠誠を誓うポーズのようなものだろうか。
「ヴィクター殿下、よくぞこのような場所までお越しくださいました。」
集まった兵団の中で先頭にいた男がヴィクターに話しかけた。男の身長はそこまで高くないがプロレスラーのような体型をしており、見るからに強そうだ。
「やあ、エドマンド。訓練の邪魔をしてしまってすまないね。実は前に話していた従者の件、今日から訓練を頼みたいのだけどいいかな?」
「は!承知いたしました。この兵士長エドマンドが責任をもって、その者の訓練を行います。」
エドマンドはヴィクターの前で膝をつきながら遠くにいても聞こえるような大きな声で言った。兵士長というだけあって、とても真面目そうな人だ。
「うん、ありがとう。タケル、ここにいるのが兵士長のエドマンドさ。剣術のことで分からないことがあったら、彼に何でも聞いてほしい。必ず力になってくれるからね。さあ、今度はタケルからも兵団の皆に自己紹介をしてくれないかな?」
ヴィクターに促され、俺は前に出た。エドマンドを始め、兵団全員の目線がタケルに集中する。大勢の人から一斉に注目される経験なんて全くなかったからか、考えていた自己紹介が頭から飛んでしまった。
「ああ、えっと、タケルって言います。商業都市エゼムからきました。頑張りますのでよろしくお願いします。」
なんともつまらない自己紹介になってしまった。だが兵士たちの表情は特に変わることなく真剣なままだ。ただ何の反応もないので、完全に滑ってしまったように感じてしまい、早くこの場から立ち去りたくなった。
「それじゃあ僕はこのあたりで失礼するよ。タケル、頑張れよ!」
ヴィクターはいつもの笑顔を浮かべながら、満足そうに去っていた。




