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異世界と魔女  作者: 氷魚
第一部 異世界と勇者 第五章
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第50話

どのくらい時間が流れたのだろうか。


気が付けばサーシャとの戦いは長期戦となっていた。


サーシャは強大な大岩を放ったり、小さな岩を連続で放つ魔法を休むことなく繰り出し、俺はそれらを”光の剣”で防いだ。


牽制の意味を込め、俺は隙を見つけては、”ファイアボール”や”ライトボール”を放ってみるものの、サーシャが作る巨大な岩の壁に塞がれてしまい、遠距離攻撃は何の意味も成さなかった。


サーシャが魔法を放ち、俺がそれを迎え撃つ。その繰り返しが続き、お互いに決め手のない状態だった。


(いや、決め手がないのはサーシャの方だけで、本当は……)


俺が光の剣で本気で攻撃すれば、サーシャを倒すこともできるかもしれない。


しかし、それだけはできなかった。こんな状態になっても俺はサーシャのことが諦められなかった。


「なあ、ちゃんと理由を話してくれ!なんで俺を殺そうとするんだ!?」


もう何発目かも分からないサーシャの魔法を俺は打ち砕きながら尋ねた。


「……何度も言わせないで!イセカイジンを殺す、その啓示を私は受けた。だからあなたを殺すだけってこと!」


「意味が分からない!なんで異世界人を殺さないといけないんだ!?それに啓示って何なんだよ!?」


俺は再度サーシャに尋ねながらも、内心に動揺が広がっていくのを感じた。


(オルズベックさんも同じようなことを言っていた。異世界人を殺すって。どうしてそんな……)


「分かった、答えてあげる。啓示はこの世界の”神様”から受けるもの。啓示を受けるのは名誉なことであるのと同時に、示された命令は絶対に成し遂げなければならない。」


俺が光の剣で魔法の連撃を受けながら考え込んでいると、サーシャは突然魔法を撃つのを止め、その右手を下ろし、話を始めた。


「もし成し遂げられなければ、啓示を受けた者にとって一番大切なものを失う。……そういう決まりなの。」


サーシャは冷たい表情を俺に向けたまま、話を続けた。


「私にとって大切なものは、ロズリーヌとここにいた神殿のみんな、そして森の仲間たち……どれも失いたくない大切なもの。あの子たちを守るためなら、私はなんだってやるつもりなんだから!」


サーシャは叫ぶように言うと再び右手を構え、魔法を撃ち始めた。


(神様?いったい何の話を……だめだ、今は考えている余裕はない!)


俺は激しくなっていく魔法を次第に光の剣だけでは受け切れなくなっていた。


(まずい!このままじゃ!)


俺は全力で横に飛びながら、魔法がぶつかりそうになる寸前で避け続けた。


(……さっきより魔法を撃つ速度も威力も高くなっている!サーシャはまだ本気じゃなかったっていうのか!?)


俺は魔法を避けながら、サーシャの底知れぬ力に恐怖を感じた。


突然、雨のように降り注いでいた魔法が急に止んだ。俺はすぐにサーシャの方を見たが、先ほどまでいたところからサーシャの姿が消えていた。


広場だったここも、いくつもの破壊された岩が転がり、さらには酷い砂埃で、既に原型はなくなっていた。


そのような中でも、サーシャは戦闘中、最初にいた場所から一度も動くことはなかったのだが、今になって動き出し、姿を見せなくなった。


俺はちょうど目の前にあった大岩の蔭に隠れながら、サーシャの姿を探した。


(魔法が止まったってことは、サーシャはどこかに隠れているのか?でもこんな砂埃じゃ、俺の眼でも探しようが……)


俺が焦るように周りを見渡していたその時、俺のそばにあった大岩が突然消えた。


そこに寄りかかっていた俺は体勢を崩すとともに、目の前に現れた人物に驚き、頭が真っ白になっていくのが分かった。


サーシャがそこにいた。大岩の残骸かと思っていたものは、サーシャが一時的に魔法で作り上げたものだったみたいだ。


(魔法を使ってこんなこともできるのか……)


もはや俺はサーシャから離れようとする意思すらなくなっていた。


すでに俺の目の前でサーシャは右手を構え、強力な魔法を練り上げていたからだ。


(……もう無理だ、どうしようもない。)


なぜサーシャが俺に襲い掛かってきたのか。どうして俺はサーシャに殺されてしまうのか。


その理由がまったく分からないまま、俺は唐突な死を迎えようとしていた。


「けほ……けほ、けほ!」


しかし突然、サーシャは苦しそうに咳をし始めた。


そのせいか、サーシャの練り上げていた魔法も消えてなくなった。何が起きたのか分からなかった俺は思わず、咳に苦しむサーシャをぼんやりと見ていた。


(どうしたんだ?なんだか顔色も悪そうだけど……いや!でも今は!)


サーシャのことが気になりはしたが、我に返った俺はすぐに後方に下がり、サーシャから距離を取った。


「……」


咳が止まったサーシャは、何事もなかったかのように再び魔法を撃ち始めた。


(危なかった。だけど、このままじゃ……)


異変を感じたのはサーシャのことだけではなかった。


俺は自分自身の体にも違和感を覚え始めていた。

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