第4話
「あの・・・ありがとうございました。」
俺は一瞬で傷が治るという魔法のような出来事を頭に無理やり受け入れながら、目の前の長身の男にお礼を言った。
「いや、こちらこそ迎えに行くのが遅くなってしまい申し訳ない。この森にはさほど脅威となるモンスターもいないが、万が一何か起きていたらと思うとゾッとするよ。」
男は俺に手を差し伸べながら言った。いや実際にモンスターに襲われて重症だったのだが、この世界では先ほどのような怪我でも大事ではないようだ。
「あの、迎えに来てくれたってことでいいんですか?」
俺は男の手を取りながら立ち上がりつつ質問した。オウルの言っていた現地の協力者とはこの男なのだろうか。
「ああ、予言で君が今日現れることは分かっていたからね。僕が代表として迎えに来たのさ。」
男は爽やかな笑顔を浮かべながら言った。改めて見ると何となく気品のある男だ。もしかするとこの世界の貴族なのかもしれない。
「予言?それに代表というのは・・・?」
「おっと、まだ名乗っていなかったね。僕は君が今いるこの国、カーレイド王国の第一王子、ヴィクターだ。君の名も聞いてもいいかな?」
貴族どころか一国の王子だった。
「は、はい!俺はタケルっていいます。よろしくお願いします。」
初めて見る本物の王子に俺は少し緊張してしまった。
「うん、お互い自己紹介も済んだことだし、このまま立ち話ってわけにもいかないだろう。近くの町まで移動しよう。タケルも怪我が治ったとはいえ、疲れているだろうからね。」
ヴィクターはついて来いといったジェスチャーをしながら歩き始めた。このまま従って良いのだろうか?
怪我を治してくれたとはいえ、得体のしれない人物かもしれない。正直、王子と言われても、この世界の住人ではない俺に彼が本物の王子かどうかなんて確かめようがない。しかし、一人でこのまま森にいるわけにもいかない。
「・・・まあ、ここはついて行くしかないよな。」
結局、俺は「なんとかなるだろう」と楽観的に考え、ヴィクターについて行くことにした。




