第2話
角の生えたウサギ、一角ウサギとでもいうのだろうか。それは再度俺に攻撃を繰り出すためか、こちらを向き、今にも飛びかかろうとしていた。
「っクソ!」
俺は剣を鞘から出し、ウサギに対して向けた。しかし、剣を向けた程度でウサギはひるむことなく、こちらに向かって猛進し始めた。
「あああ!これでもくらえ!」
俺はウサギに向かって声を上げて突撃した。ウサギに似た生物を殺すことに躊躇してしまう気持ちが俺の中にあったが、やらなければやられる!ウサギとの距離が近くなった瞬間、思いっきり剣を振り下ろした。
「…っく!ってあれ?当たった感触が無い?」
剣を振り下ろす際、無意識に目をつぶっていたようだ。目を開けるとそこにはウサギはおらず、剣先が地面に刺さっていた。
「ウサギはどこ行った?…っ痛てえ!!」
見失ったウサギを探すため、辺りを見渡そうとした瞬間、背中に激痛を感じた。すぐに振り返ると真後ろにウサギがいた。どうやら剣が空振りした際にウサギは俺の背後に回り込み、そのまま背中を攻撃したようである。
「ひっ、ひっ…くは!」
俺はそのままその場に倒れ込んでしまった。背中を攻撃されたせいか、うまく呼吸ができなくなった。背中を貫通はされていないと思うが、べちゃっとした気持ち悪い感触が広がっていく感じから、流血していることは確実だった。
「すー、はー。はあ、はあ。ああもう!チキショウ!」
俺は無理やり呼吸を整え、体にムチ打って無理やり立ち上がった。
再度剣を構える。そうこうしているうちに、ウサギは体勢を整え、またこちらに突進しようとしているのがわかった。
「大丈夫・・・絶対大丈夫だ!俺は部活で剣道を真面目にやってきたんだ・・・」
深呼吸しながら俺は竹刀を持つように構えた。最初にこの剣を振った時は竹刀との重さの違いについ体勢が崩れてしまったが、今は補正できる自信が俺にはあった。
「オウルにも聞かれたけど確かに俺には実際の戦闘経験なんてない!」
しかし、今の状況だって武道で学んできたことは応用できるはずだ。相手のウサギの知能は低い。ただまっすぐ体当たりを仕掛けてくるだけだ。だったら相手の動きに合わせ、自分の間合いで剣を振るだけだ。
「・・・ふう。」
俺は集中した。さきほどまで体中を駆け巡っていた激痛も感じなくなった。草木が揺れる音も聞こえなくなり、ただ目の前のウサギにのみ全神経を注いだ。
ウサギは先ほどと同じようにまっすぐ突進してきた。そして俺めがけて飛び跳ねた瞬間、俺はスッと剣を振り下ろした。
っどがぁ!
聞きなれない鈍い音と共に目の前のウサギに鉄製の剣が食い込んだ。そしてそのままウサギは倒れ、しばらくピクピクと痙攣した後、全く動かなくなった。
「ははは、やったぞ!・・・ってあれ体が?」
数秒の間、倒れたウサギを凝視した後、勝利の実感がこみ上げてくると共に体が言うことを聞かなくなり、俺はその場に倒れ込んでしまった。
「はあ・・・このままだとやばいかも。」
俺はそのまま意識を失った。




