表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界と魔女  作者: 氷魚
プロローグ
1/246

第1話

俺は自分の発言に後悔しながら街を走り続けていた。


きっかけは些細な事だったと思う。


リビングでたまたま居合わせた妹のルカと口論となり、ルカは家を飛び出した。


ルカとは昔から仲が悪かった。


ルカは勉強やスポーツ、ゲームをやる時でさえ、何かと対抗心をむき出しに俺に挑んできた。

俺も負けず嫌いから、全力で迎え撃ち、常に負かしていたが、その度にルカは大声を出して泣き、次の日には、また俺に挑んできたのだ。


俺はだんだん、そんなルカが煩わしくなり、次第に無視するようになった。

無視するようになってから、ルカは以前ほど俺に挑んで来ることは無くなったが、

仲が改善することも無かった。


中学に上がった現在では、お互いに口を聞くことも無くなっていた。


そんな状態だったのに、お互い虫の居所が悪かったのか、つまらない些細な事で言い合いとなり、俺はルカに言ってはいけない一言を言ってしまった。


「お前となんか兄妹じゃなきゃよかった!」


飛び出したルカを放っておいても良かったが、バツの悪さもあり、夕方から天気が崩れるとのことだったので、俺は傘を持って妹を追いかけた。


ルカに追い付いたら、一言謝って一緒に帰り、取っておいた冷蔵庫のプリンを渡して仲直りしよう、そんなことを考えながらルカを追いかけた。


追いかけてすぐにルカを見つけることができた。


ルカは学校に行く途中の交差点にいた。

なぜそんなところで、横たわっているのか不思議だった。


俺はルカに近づいた。

「なんでこんなところで寝ているのか」なんて的外れな事を考えながら。


ルカの体は真っ赤に染まっていた。なぜ真っ赤なのか分からなかった。


ルカは目をつぶったまま動かなかった。確認はしていないが息をしていないことも何となく分かった。


俺は頭が真っ白になった。一つの答え以外、何も考えられなかった。

そう、「ルカは死んだ」ということ以外は。


俺はその場で崩れを落ち、ルカを抱き上げた。

どうしたらいいのだろうか、何をすれば、この状況は変わるのだろうか。


何秒か何時間か分からないが、そのままずっとルカを抱きかかえていた。

そのうち、俺自身の体から熱が失われたように感じ始めた。

いつのまにか降り出した雨のせいだろうか。


雨が次第に本降りになる中、俺は次第に声に出して祈り始めた。

「誰か妹を助けて下さい。」


馬鹿らしいことだし、どうしようもないことだってことぐらい頭では分かっている。

しかし、そうせずにはいられなかったのだ。


「神様でも悪魔でも何でもいい。どうかルカを生き返らせてください。」


「その願いのために、あなたは何をくれるの?」


突然後ろから聞きなれない女性の声がした。


振り向くとそこには、黒いドレスに白い仮面を付けた女性がいた。

顔は分からなかったが、何となく日本人では無いと思った。


「あなたが私が望むものをくれるなら、その願いを叶えてあげる。」


仮面で表情は分からないが、女性はどこか楽しそうに俺にそう言った。


俺は女性の言うことが全く理解できないでいた。


ただ、仮面を付けた奇妙な女性のこと、とても美しい人なのだろうと、

どこか頭の片隅で考えていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ