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God's Locus  作者: フリート
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第十七話 噂

「アウリエラ! ソラ! 見えてきたぞ!」

 森を出て四日の昼、ついに獣神国バルキエラの外壁が見えてきた。地図をみて確認をとったので間違いない。

 目的は二つ。この国の王様に会って、流星と俺達の力について訊くことと、そして流星の回収だ。

 実は、四日間の間に立ち寄った村で、落ちてきた流星は、その危険性から一部を除いて全て獣神国に回収されたと聞いたのだ。それも王様に訊いてみよう。

「大きいぃ。」

 ソラが口をぽっかり開けていた。

「まぁ、神王国だからな。」

「神王国?」

 彼女が俺に尋ねる。

「あぁ。この世界には人族、獣族、精霊族、水族、魔族の五つの種族がいるだろ? 神王国はそれぞれにたった一つだけ存在する、神々が直接神託を下す国のことだ。」

「つまり神様のお膝元ってことね。」

 アウリエラが簡単にまとめた。

「一言で言うと、そうだ。」

「へぇー。」

 おいおい、興味なさそうだな!

 そうこうしている内に門の前にできている行列に並ぶ。

 列を守るように衛兵がいた。その内の何人かは列の整備に追われているようだ。

 カルバニエの時よりも列は数倍長いが、進みは早い。

 三十分程で入国することができた。門兵の検閲がとてつもなく早かった。

 神の下には精鋭のみ、ということだろうか。

「わあぁ。すごい!」

「確かにすごいわね。」

 二人とも、今まで碌に外に出たことがなかったのだから仕方がないのだろうと思いつつ、実は俺も感動していた。

 門から先には、馬車が五台は余裕で通れるだろう、超が付くほど大きな道が一本、奥の王城まで続いている。

 大通りの端には露店が所狭しと並んでいて、どこも人で賑わっている。

 何より驚いたのは、道行く者の姿である。動物の耳が頭にあり、腰から尻尾が伸びているのだ。

 獣族だ。人型の者は特に獣人と呼ばれる。

「きゃあああ! かわいいいい! モフモフしたいっ。」

 隣でソラが目を輝かせている。

 その横でアウリエラも叫びたそうにしていた。

「できたらいいな。」

 普通は無理だろう。あっちからしたら、初対面の人に体をまさぐられるのだ。当然、嫌に決まっている。

「いや、この国を出るまでに、必ずモフモフしてみせるんだから! ね! アウラ。」

「そ、そうね!」

 彼女達はひどく息巻いていた。

「とりあえず、宿を探そうか。」

「そうねっ。モフモフできるとこがいい。」

 ソラは俺の提案に無茶を返してきた。

「あるわけないだろう。」

「そうかしら?」

 アウリエラ……。

 調子に乗りすぎているとは思うが、子供のような純粋な目をする彼女達を止める気は、俺には起こらなかった。

 四軒目でようやく部屋を確保できた。

 太陽がわずかに下り始めた気がする。

 とりあえず馬車を預け、今日一日は三人で情報収集と、ついでに観光をすることにした。

 貨幣は全世界共通で、エルギアさん達と師匠達から旅費として大金板を、それはもうたくさんいただいた。それだけでなく、カルバニエでの妖退治の報酬で俺個人にも大金板を十枚も下さった。ありがたやーありがたやー。

 ちなみに貨幣は、銅貨、銀貨、金貨、小金板、大金板、小白金板、大白金板の順に、それぞれ十枚で一つずつ上に上がっていく方式だ。

 俺たちは早速、宿の近くの市にやってきた。

「ねえ、アウラ、ラキエルっ。私ここにあるもの全部食べてみたい!」

「奇遇ね、ソラちゃん。私もよ!」

 また無茶を言い出した。

「少し落ち着け。冷静になって考えろ。お前らの胃袋はどう見てもそれが可能な大きさじゃない。無理だ。」

 俺は必死に彼女を諫める。

「「食っ!」」

 悔しさの声に食欲が滲み出ている。

「それもそうね、じゃああの肉串三十本だけでいいわ。」

「そうだね。それなら私達で食べれるよ。」

「三人で、だよな?」

「え、えぇ。勿論。」

 疑わしいが、いいか。

「おっちゃん、三十本くれ。」

「あいよ!」

 虎人のおっちゃんが肉串を袋に詰めていく。

「あい、肉串三十本っ! 合計金貨一枚と銀貨五枚ね。銅貨百五十枚はやめてくれよ? はっはっ!」

 元気なおっちゃんに俺は金貨二枚を払い、銀貨五枚をおつりで貰って店を後にする。

 アウリエラとソラは満足した表情で大事に肉串を抱えている。

 肉串を食べ終わったところで、アクセサリーを売っている露店の、兎人の婆ちゃんが声をかけてきた。

「そこの可愛いお嬢さん達、アクセサリーはいらんかい?」

「アクセサリー?」

 ソラが気になったようだ。

「へえ、とても綺麗ね。つけてみても?」

 アウリエラも興味を示したな。

「どうぞ。」

「どう? 似合ってる?」

 耳飾りを一つ、耳に近づけて自慢するように、アウリエラが俺に聞いてくる。

「それも似合うが、俺はこっちの方が似合ってると思う。」

 そう言って俺は、銀色の三日月と、その下の先端に小さな白い宝石が輝く耳飾りを手に取り、彼女の耳に当てた。

 あの夜を再現した、彼女にぴったりのものだと思ったのだ。

「……っ。あら、そう? でも高そうね。」

「婆ちゃん、これいくらだ?」

「小金貨三枚だよ。」

「やっぱり……。」

 婆ちゃんの言葉に、アウリエラは少し落ち込んだ。

 だがそれでも、札を見る限り、二枚ほどまけてくれたようだ。

 しかし

「いいや、札の値で買うよ。」

「あらま。お兄さん、甲斐性あるねぇ。」

 もちろん巾着ではなく、腰のポーチから大金板を取り出す。

「まいどあり。」

 小金板五枚と、耳飾りをもらった。

「耳向けて。つけてやるよ。」

 アウリエラが耳をこちらに向けたので、耳飾りをつけた。

「ふふっ。ありがとっ。」

 くっ、彼女の笑顔が眩しいっ。

「おまけに器量も良しときた。彼氏さんやい。」

 「「か、彼氏 ⁉︎」

 俺とアウリエラは二人揃って顔を赤くした。

「ち、違うぞばあちゃん! 俺達はそんな関係じゃないっ。」

「ほえ? そうなのかい。いやそれでも、そっちの子をあんたがしっかり守ってやるんだよ。最近物騒な噂ばっかり聞くからねぇ。」

「物騒な噂? おばあちゃん、それ詳しく。」

 お、なにやら危険な香りがするぞ。

「あたしが聞いたもんだと、なんでも、最近夜になるとどこからともなく大男が現れて、見付かったら最後、体ごと飲み込まれちまうんだと。そんで朝になると、大男は跡形もなく消え、その場にはマナをごっそり抜かれて干からびた死体しか残っとらんのだとか。」

 恐ろしいな。だが、俺には心当たりがある。

 アウリエラがこちらを見る。どうやら彼女も同じ考えらしい。

「おばあちゃん、そいつの体、銀色だとかキラキラ光ってるとか聞かない?」

「あぁ、なんだい。あんたらもちょっとは知ってんのかい。そうだよ、そういう噂も確かにある。」

 まだ噂でしかないが、おそらく、妖だ。

「ありがとう、おばあちゃん。」

 アウリエラが笑顔でお礼を言う。

「どういたしまして。くれぐれも夜は出歩かないようにね。」

 俺達は、ばあちゃんに会釈して露店を後にした。

「ラキエル、もう少し調べましょう。」

「あぁ。どうやらそのほうが良さそうだ。そうだな…まずは総合ギルドに行こう。」

「わかったわ。」

 俺達は観光を中止して情報収集に専念することにした。

「私、忘れられてる?」

「あ、いたのか、ソラ。」

 全然会話に入ってこなかったので、すっかり忘れていた。

「いたのか、じゃないよ! あのさ、急に二人の世界に入られちゃうとさ、すごい話しかけづらいの。それがダメとは言わないよ? お爺ちゃんとお婆ちゃんもたまにあったし。」

 あったのか。

 てか、二人の世界って……。

 俺達、やっぱそういう風に見えるのか?

「ご、ごめんねソラちゃん。気をつけるよ。」

 とりあえず、俺達は総合ギルドに向かった。

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